代数的トポロジーという分野の特徴の一つとして, 様々な空間に対し数に対して行なうような「演算」を行なう,
ということが挙げられるだろう。Baez と Hoffnung が [BH11] で書いているように, 他の分野でもこの視点は有用であるらしい。よって,
これらの操作に慣れるのが学生時代の重要な修行の内の一つである。
まずは位相空間や基点付き位相空間の圏での product や coproduct について知っておくべきだろう。
- disjoint union \(X\coprod Y\), より一般に位相空間族 \(\{X_{\alpha }\}_{\alpha }\)に対し \[ \coprod _{\alpha \in A} X_{\alpha } \]
- 直積 \(X\times Y\), より一般に位相空間族 \(\{X_{\alpha }\}_{\alpha }\)に対し \[ \prod _{\alpha \in A} X_{\alpha } \]
-
wedge \(X \vee Y\), より一般に位相空間族 \(\{X_{\alpha }\}_{\alpha }\) に対し \[ \bigvee _{\alpha \in A} X_{\alpha } \]
これらを用いると, まず 空間の図式の limit や colimit が定義 (構成) できる。
- 部分空間 \(A \subset X\) と連続写像 \(f : A \to Y\) に対し, \(Y\) に \(X\) を \(f\) で貼り付けた空間 \(X\cup _f Y\)
- pull-back と push-out
- 空間と連続写像の図式に対し, その limit と colimit
和集合や colimit を取ることの逆の操作は, 空間の分解や stratification である。
直積の位相 (よって limit の位相) については, 少し修正したものを用いることが多い。 コンパクト生成にしておくのである。
例えば, そうしないとsmash積が結合法則をみたさないかもしれないのである。 そのような例は, May と Sigurdsson の
[MS06] の Appendix 1.5 にある。
- fat wedge
-
smash 積 \(X\wedge Y\), より一般に位相空間族 \(\{X_{\alpha }\}_{\alpha }\)に対し \[ \bigwedge _{\alpha \in A} X_{\alpha } \]
Wedge や fat wedge の一般化として, 空間の族 \(\bm {X}=\{X_{\alpha }\}_{\alpha \in A}\) と \(A\) を頂点集合とする 単体的複体 \(K\) に対し, polyhedral product \(\bm {X}^K\)
という構成がある。 Bahri と Bendersky と F. Cohen と Gitler の [Bah+10] では, relative
で各 \(X_{\alpha }\) の基点が一致していない場合も含めた構成も考えられていて, generalized moment-angle complex
とも呼ばれている。
空間の図式を, 極限を取らないでそのまま考えるというアイデアもある。
以上は, 圏論的な構成であり, 位相空間の圏以外でも類似の構成ができる圏も多い。 次のものは「ホモトピー論的」な構成である。
- 空間 \(X\) の cone (錐) \(CX\) と suspension (懸垂) \(\Sigma X\)
- 基点付き空間に対して, reduce cone (約錐) と reduced suspension (約懸垂)
-
写像柱 (mapping cylinder) と 写像錐 (mapping cone)
- ホモトピーファイバーやループ空間などの 写像空間を用いた構成
-
mapping track
- homotopy limit と homotopy colimit
-
join \(X\ast Y\)
ループ空間については, 積が strict に結合的である Moore loop space という構成があるが, Fiedorowicz の
[Fie84] では, それに対応する懸垂が定義されている。
Mineyev [Min05] は, 距離空間に対し symmetric join という構成を定義している。
特定の情報を取り出したいときには, 局所化の操作を用いる。
無限次元の空間をfunctorialに近似することも重要である。
1970年代に 代数的\(K\)理論, そして 無限ループ空間の理論からの要請により, 2つの重要な操作が導入された。
Plus construction は, ホモロジーを変えずに 基本群をその perfect subgroup で割ったものにする操作である。
Plus construction のように, 空間にある操作を施してホモトピー群を望む形にするということは一般的な技術である。
最も古典的なのは Postnikov tower の構成だろう。
Postnikov tower の構成にはいくつかの方法があるが, simplicial set の圏で行なうと functorial にできる。例えば,
Curtis の [Cur71] を見るとよい。
Postnikov tower が \(n\)-stage までしかない空間, つまり homotopy \(n\)-type, に対象を限定して調べようという研究もある。例えば,
homotopy \(1\)-type は groupoid の分類空間として記述できる。
スペクトラムの圏ではホモロジー代数的な構成が行える。
References
-
[Bah+10]
-
A. Bahri, M. Bendersky, F. R. Cohen, and S. Gitler. “The
polyhedral product functor: a method of decomposition for
moment-angle complexes, arrangements and related spaces”. In:
Adv. Math. 225.3 (2010), pp. 1634–1668. arXiv: 0711.4689. url:
http://dx.doi.org/10.1016/j.aim.2010.03.026.
-
[BH11]
-
John C. Baez and Alexander E. Hoffnung. “Convenient categories
of smooth spaces”. In: Trans.
Amer. Math. Soc. 363.11 (2011), pp. 5789–5825. arXiv: 0807.1704.
url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9947-2011-05107-X.
-
[Cur71]
-
Edward B. Curtis. “Simplicial homotopy theory”. In: Advances in
Math. 6 (1971), pp. 107–209. url:
https://doi.org/10.1016/0001-8708(71)90015-6.
-
[Fie84]
-
Z. Fiedorowicz. “Classifying spaces of topological monoids and
categories”. In: Amer. J. Math. 106.2 (1984), pp. 301–350. url:
http://dx.doi.org/10.2307/2374307.
-
[Min05]
-
Igor Mineyev. “Flows and joins of metric spaces”. In: Geom.
Topol. 9 (2005), pp. 403–482. arXiv: math/0503274. url:
http://dx.doi.org/10.2140/gt.2005.9.403.
-
[MS06]
-
J. P.
May and J. Sigurdsson. Parametrized homotopy theory. Vol. 132.
Mathematical Surveys and Monographs. American Mathematical
Society, Providence, RI, 2006, pp. x+441. isbn: 978-0-8218-3922-5;
0-8218-3922-5. url: https://doi.org/10.1090/surv/132.
|