空間の図式

ある圏 \(\bm {C}\) における図式とは, ある small category \(I\) から \(\bm {C}\) への functor のことである。

様々な場面で, 図式を図式ではなく, 一個の“もの”として扱うと便利なことが多い。 例えば以下のような場合がある。

  • 連続写像 \(E \to X\) は, \(X\) 上の fiberwise space あるいは parametrized space とみなすことが多い。
  • simplicial space は functor \[ \Delta ^{\op } \rarrow {} \category {Top} \] のことであるが, simplicial space 自体を一つの幾何学的対象として考えるのが普通である。
  • (離散) 群 \(G\) を, objectが一つで morphism の集合が \(G\) であるような small category とみなすと, \(G\) の作用する空間とは, 関手 \[ G \rarrow {} \category {Top} \] のことである。
  • Simplicial object の定義に用いる \(\Delta ^n\) は poset \([n]=\{0< 1<\cdots < n\}\) の部分集合と order preserving map の圏であるが, その morphism を inclusion だけに制限した圏 \(\mathcal {P}([n])\) を 定義域に持つfunctor \[ \mathcal {P}([n]) \longrightarrow \category {Top} \] を考えると, 空間の \((n+1)\)-cube (cubical diagram) という概念になる。

    Goodwillie tower の構成には, 空間の cubical diagram が重要な役割を果す。

空間の図式のホモトピー論は, Dwyer, Kan, Dror Farjoun, Zabrodsky などによって研究されてきている。例えば, [Dro87] を見るとよい。また, ホモトピー極限model category の言葉で考えようとすると, 必然的に空間の図式の圏のホモトピー論が必要になる。より一般に, ある model category における図式の圏の model structure を考えることができる。 Quick の [Qui11] にあるように, そのような視点はホモトピー論以外でも有用なようである。

図式を, なるべく limit や colimit を取らないで, 図式そのものとして扱うため に考えられたのが, pro-object や ind-object である。

Sagave と Schlichtkrull [SS12; SS13] は, higher homotopy commutativity (\(E_{\infty }\)-structure) を考えるためには, 有限集合 (の同型類) と単射の成す small category で index された空間の図式を考えるとよい, と言っている。

図式を幾何学的対象として, その (コ)ホモロジーを定義しようというのが, Davis と Lück の [DL98]である。彼らは, small category \(I\) から位相空間の圏への contravariant functor \(X\) と \(I\) から spectrum の圏への covariant functor \(E\) に対し, \(X\) の \(E\) に係数を持つホモロジー \(H_n^{I}(X;E)\) を定義している。コホモロジーも定義している。

  • Davis-Lück の空間の図式のホモロジー

\(I\) が群 \(G\) のとき, つまり \(X\) が 群 \(G\) の作用を持つ空間のときは, Borel construction のホモロジーに一致するようである。

その論文では, Atiyah-Hirzebruch spectral sequence の類似も構成されている。[DL03]では, \(p\)-chain spectral sequence という, 新たな spectral sequence が構成されている。

  • \(p\)-chain spectral sequence

また, ホモトピー可換な図式を本当に可換な図式で取り替えられるかという問題も重要である。 これについては, Dwyer と Kan と Smith の [DKS89] がある。 また, Riehl の lecture note [Rie] が分かりやすい。 鍵となるのは, homotopy coherent diagram である。

  • homotopy coherent diagram

References

[DKS89]

W. G. Dwyer, D. M. Kan, and J. H. Smith. “Homotopy commutative diagrams and their realizations”. In: J. Pure Appl. Algebra 57.1 (1989), pp. 5–24. url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(89)90023-6.

[DL03]

James F. Davis and Wolfgang Lück. “The \(p\)-chain spectral sequence”. In: \(K\)-Theory 30.1 (2003). Special issue in honor of Hyman Bass on his seventieth birthday. Part I, pp. 71–104. arXiv: math/0212074. url: http://dx.doi.org/10.1023/B:KTHE.0000015339.41953.04.

[DL98]

James F. Davis and Wolfgang Lück. “Spaces over a category and assembly maps in isomorphism conjectures in \(K\)- and \(L\)-theory”. In: \(K\)-Theory 15.3 (1998), pp. 201–252. url: http://dx.doi.org/10.1023/A:1007784106877.

[Dro87]

Emmanuel Dror Farjoun. “Homotopy and homology of diagrams of spaces”. In: Algebraic topology (Seattle, Wash., 1985). Vol. 1286. Lecture Notes in Math. Berlin: Springer, 1987, pp. 93–134. url: http://dx.doi.org/10.1007/BFb0078739.

[Qui11]

Gereon Quick. “Continuous group actions on profinite spaces”. In: J. Pure Appl. Algebra 215.5 (2011), pp. 1024–1039. arXiv: 0906.0245. url: http://dx.doi.org/10.1016/j.jpaa.2010.07.008.

[Rie]

Emily Riehl. Homotopy coherent structures. arXiv: 1801.07404.

[SS12]

Steffen Sagave and Christian Schlichtkrull. “Diagram spaces and symmetric spectra”. In: Adv. Math. 231.3-4 (2012), pp. 2116–2193. arXiv: 1103.2764. url: https://doi.org/10.1016/j.aim.2012.07.013.

[SS13]

Steffen Sagave and Christian Schlichtkrull. “Group completion and units in \(\scr I\)-spaces”. In: Algebr. Geom. Topol. 13.2 (2013), pp. 625–686. arXiv: 1111.6413. url: https://doi.org/10.2140/agt.2013.13.625.