数理物理とそれに関連した数学

数理物理に関する話題は挙げ始めるときりがない。古い時代のことはよくしら ないが, Donaldson が Yang-Mills 理論を使ったことでトポロジーの研究者が数理 物理に注目し始めたのは確かだろう。 そして, その後の数理物理と数学のinteractionには, Wittenの登場が決定的だっ たことは言うまでもない。

物理の数学の関係についての解説も色々あるが, どんどん新しい関係や視点が発見されているので, なるべく新しいものを読む べきだろう。最近ではGreg Moore の String 2014 の“vision talk” lecture noteがある。 物理学が 数論代数幾何学のような, 純粋数 学の代表のような分野にも影響を与えているのは驚くべきこと, だと思うが, そ のような物理に触発されて発展した数学のことを, Moore は physical mathematics と呼んでいる。

  • physical mathematics

その本質は, 次の Moore の lecture note の文章でよく表されていると思う。

If a physical insight leads to a significant new result in mathematics, that is considered a success. It is a success just as profound and notable as an experimental confirmation from a laboratory of a theoretical prediction of a peak or trough. For example, the discovery of a new and powerful invariant of four-dimensional manifolds is a vindication just as satisfying as the discovery of a new particle.

Twisted \(K\)-theoryをはじめ, 代数的トポロジーの道 具もどんどん使われるようになっている。Freed と Moore による topological phaseに関する論文 [FM13] は

Increasingly sophisticated ideas from homotopy theory are being used to elucidate issues in quantum field theory and string theory.

という文章で始まっている。Freed と Moore の使っているのも twisted \(K\)-theory であるが, Freed の [Fre08] では, よりホモトピー論的 (?)な, \(\mathrm{Sq}^1\mathrm{Sq}^2\) による two stage Postnikov system が使われている。

逆に, 数学の人間が物理を勉強しようとすると, 基本的なことが数学的にキチ ンと定義されていないことが障壁になる。ホモトピー論をある程度知っている 人には, この\(n\)-Category Caféの記事で紹介されているPaugam の本 (執筆中) が よいかもしれない。Sati と Schreiber の quantum field theory の解説 [SS] に様々な文献が挙げられているので, その辺が手掛かりにな るかもしれない。

この Sati と Schreiber の解説 によると, quantum field theory に は, Atiyah によるcobordism category か らの functor としての formulation (Sati と Schreiber は functorial quantum field theory と呼んでいる) の他に algebraic quantum field theory という formulation もある。

現在ではarXivには Quantum Algebra (math.QA) という分野 もできているが, それが何を意味するかは, 私にはよく分からない。 Vertex operator algebraquantum group, そして(代数的な) operadもこれに含まれるようである。

トポロジーとの関連で有名なのは, 上記のDonaldsonやWittenの仕事であるが, それ以外にも色々ありそうで, あまりそのような大きな流れに惑わされない方 がよいように思う。例えば, BenedettiとZieglerの[BZ11]によると, quantum gravityを単体的複体上で考えると いうアイデアもあるようである。統計物理に現われるモデルも数学的に面白い ものが多い。

物性物理学の理論面でも面白い数学的構造が現れるようである。

数理物理からの影響は数学への問題の供給だけには留まらず, 数学の方法その ものも次第に変化してきている, ようである。つまり, 厳密な定義に基づいて 論理的に議論を展開していなくても, 革新的なアイデアがあれば論文として評 価する, という具合に, である。もちろん, この傾向を快く思わない数学者も 多いことは確かである。これについてはBulletin of A.M.S.に掲載された Authur JaffeとFrank Quinnの論説[JQ93]とそれに対する反論 [Aa94]を読むと面白い。更にJaffeとQuinnからの反 論[JQ94]やThurstonの[Thu94]もある。

References

[Aa94]

Michael Atiyah and et al. “Responses to: A. Jaffe and F. Quinn, “Theoretical mathematics: toward a cultural synthesis of mathematics and theoretical physics” [Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 29 (1993), no. 1, 1–13; MR1202292 (94h:00007)]”. In: Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 30.2 (1994), pp. 178–207. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0273-0979-1994-00503-8.

[BZ11]

Bruno Benedetti and Günter M. Ziegler. “On locally constructible spheres and balls”. In: Acta Math. 206.2 (2011), pp. 205–243. arXiv: 0902.0436. url: http://dx.doi.org/10.1007/s11511-011-0062-2.

[FM13]

Daniel S. Freed and Gregory W. Moore. “Twisted Equivariant Matter”. In: Ann. Henri Poincaré 14.8 (2013), pp. 1927–2023. arXiv: 1208.5055. url: http://dx.doi.org/10.1007/s00023-013-0236-x.

[Fre08]

Daniel S. Freed. “Pions and generalized cohomology”. In: J. Differential Geom. 80.1 (2008), pp. 45–77. arXiv: hep-th/0607134. url: http://projecteuclid.org/euclid.jdg/1217361066.

[JQ93]

Arthur Jaffe and Frank Quinn. ““Theoretical mathematics”: toward a cultural synthesis of mathematics and theoretical physics”. In: Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 29.1 (1993), pp. 1–13. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0273-0979-1993-00413-0.

[JQ94]

Arthur Jaffe and Frank Quinn. “Response to: “Responses to: A. Jaffe and F. Quinn, ‘Theoretical mathematics: toward a cultural synthesis of mathematics and theoretical physics’ ” [Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 30 (1994), no. 2, 178–207; MR1254073 (95b:00003)] by M. Atiyah et al”. In: Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 30.2 (1994), pp. 208–211. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0273-0979-1994-00506-3.

[SS]

Hisham Sati and Urs Schreiber. Survey of mathematical foundations of QFT and perturbative string theory. arXiv: 1109.0955.

[Thu94]

William P. Thurston. “On proof and progress in mathematics”. In: Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 30.2 (1994), pp. 161–177. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0273-0979-1994-00502-6.