Triangulated Category

Triangulated category は, chain complex の圏のホモトピー圏のようなものである。 環 \(R\) 上の chain complex の圏でホモロジーの同型を誘導する写像 (quasi-isomorphism) を形式的に可逆にしてできる圏は, \(R\) の derived category と呼ばれ, Verdier の1967年の thesis [Ver96] 以来, 代数幾何を始めとした様々な分野で調べられてきた。

一方, 代数的トポロジーで, Verdier とは独立に Puppe が triangulated category の公理を発見している。 安定ホモトピー圏が, 三角圏を成すからである。

代数とトポロジーで研究されてきたことは, 実はかなりの部分で overlap がある。 例えば, 環 \(R\) の derived category とは, \(R\) に係数を持つ Eilenberg-Mac Lane スペクトラム \(HR\) 上の module spectrum の圏のホモトピー圏に過ぎない。 Krause が, 2004年7月 Chicago で行なわれた “Interactions between Homotopy Theory and Algebra” という Summer School の講演録を [Kra07] として公開しているので, それを参考にするとよい。

しかしながら, 代数的な起源を持つ triangulated category とトポロジーに起源を持つ triangulated category には大きな違いがある。mod \(2\) Moore space の存在である。 代数的な triangulated category には mod \(2\) Moore space のような object は存在しないのである。 このことについては, Schwede の [Sch10; Sch] をみるとよい。

\(C^*\)-algebra の \(K\)-theory のように, 代数とトポロジーの両方の性格を持つ分野でも triangulated category が使われるようになってきた。 当然と言えば当然であるが。Meyer と Nest の [MN06] など。

もっとも, モデル圏を知っている人間から見ると, triangulated category の定義はあまりにも単純化されすぎている, という印象を持つ。 具体的な構成を行うのに不便である。 実際, 代数的トポロジーでは、 spectrum に対して位相空間に対して行うのと同様の構成, そして, 代数的な構成の類似を行いたいという欲求から, その triangulated category の元になっている spectrum のモデル圏が構成されている。

このように, triangulated category の元になっているより豊富な情報を含んだものを定義しようという試みは, 代数的トポロジーだけでなく triangulated category が用いられる様々な分野で行われている。 このようなものを triangulated category の enhancement と呼ぶ。

代数幾何学表現論で登場する triangulated category は, 1つの代数多様体や環からできるものであり, 代数的トポロジーの安定ホモトピー圏のように, 研究対象となる幾何学的対象を全て含むようなものとはかなり趣きが異なる。 また, triangulated category を「代数多様体や環の代わり」に考え, その不変量を定義したり, ということが行なわれている。

Dimitrov, Haiden, Katzarkov, Kontsevich は [Dim+14] で triangulated category と曲面の類似を指摘し, Thurston による曲面上の力学系の類似を考えることを提案している。 Woolf の [Woo] にある表を見るとよい。

Triangulated category の一般化も色々と導入されている。

References

[Dim+14]

G. Dimitrov, F. Haiden, L. Katzarkov, and M. Kontsevich. “Dynamical systems and categories”. In: The influence of Solomon Lefschetz in geometry and topology. Vol. 621. Contemp. Math. Amer. Math. Soc., Providence, RI, 2014, pp. 133–170. arXiv: 1307. 8418. url: https://doi.org/10.1090/conm/621/12421.

[Kra07]

Henning Krause. “Derived categories, resolutions, and Brown representability”. In: Interactions between homotopy theory and algebra. Vol. 436. Contemp. Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 2007, pp. 101–139. arXiv: math / 0511047. url: http://dx.doi.org/10.1090/conm/436/08405.

[MN06]

Ralf Meyer and Ryszard Nest. “The Baum-Connes conjecture via localisation of categories”. In: Topology 45.2 (2006), pp. 209–259. arXiv: math/0312292. url: http://dx.doi.org/10.1016/j.top.2005.07.001.

[Sch]

Stefan Schwede. Topological triangulated categories. arXiv: 1201. 0899.

[Sch10]

Stefan Schwede. “Algebraic versus topological triangulated categories”. In: Triangulated categories. Vol. 375. London Math. Soc. Lecture Note Ser. Cambridge: Cambridge Univ. Press, 2010, pp. 389–407. arXiv: 0807.2592.

[Ver96]

Jean-Louis Verdier. “Des catégories dérivées des catégories abéliennes”. In: Astérisque 239 (1996). With a preface by Luc Illusie, Edited and with a note by Georges Maltsiniotis, xii+253 pp. (1997).

[Woo]

Jon Woolf. Mass-growth of triangulated auto-equivalences. arXiv: 2109.13163.