ホモトピー圏

位相空間の圏でホモトピー論を行なう際には, 2つの object の間のホモトピー集合 \([X,Y]\) が基本的な研究対象である。\(X\) から \(Y\) への morphism の集合を \([X,Y]\) と すると, ができるが, それを位相空間の圏のホモトピー圏という。同様に, ホモトピーが定義できる圏, 例えば, spectrum の圏や chain complex などの圏でもホモトピー圏は定義できる。一般的に扱うためには, やはり model category の言葉が有効である。

  • weak equivalence の成す部分圏を 局所化することによる model category のホモトピー圏 (homotopy category)

局所化によるホモトピー圏の定義は, CW複体のホモトピー論に慣れ親しんだ人にとっては分り辛いかもしれない。 古典的な手法に類似した model category の homotopy category (ホモトピー集合) の構成もあるが, それを定義するためには, 少し準備が必要である。

  • model category の object \(X\) に対し, その cylinder object
  • model category の2つの morphism \(f, g : X \to Y\) に対し, \(f\) から \(g\) への left homotopy
  • model category の object \(X\) に対し, その path object
  • model category の2つの morphism \(f, g : X \to Y\) に対し, \(f\) から \(g\) への right homotopy
  • model category の2つの morphism \(f, g : X \to Y\) に対し, \(f\) から \(g\) への homotopy
  • model category の morphism が homotopy equivalence であること
  • model category \(\bm{C}\) において \(X\) が cofibrantで \(Y\) が fibrant ならば, \(X\) から \(Y\) への morphism の集合 \(\bm{C}(X,Y)\) における left homotopy と right homotopy は一致し, 同値関係になる。よって cofibrant かつ fibrant object の成す部分圏 \(\bm{C}_{cf}\) におい ては weak equivalence と homotopy equivalence が一致する。
  • object を \(\bm{C}_{cf}\) の object, morphism の 集合を \(\bm{C}_{cf}(X,Y)/\simeq \) にした圏 \(\bm{C}_{cf}/\simeq \) は, \(\bm{C}_{cf}\) の局所化によるホモトピー圏 \(\mathrm{ho}(\bm{C}_{cf})\) と同値になる。
  • \(\bm{C}_{cf}\) から \(\bm{C}\) への inclusion は, \(\mathrm{ho}(\bm{C}_{cf})\) と \(\mathrm{ho}(\bm{C})\) の間の同値を誘導する。 よって \(\mathrm{ho}(\bm{C})\) は \(\bm{C}_{cf}/\simeq \) と同値である。

Dwyer と Spalinski の解説 [DS95] では \(\bm{C}_{cf}/\simeq \) を \(\bm{C}\) のホモトピー圏の定義としている。 CW複体の圏のホモトピー論に慣れ親しんだ人にとっては, それが最も理解し易いだろう。また, その後で圏の局所化についての解説もある。上記のことについて, 正確には Hovey の本 [Hov99] を読むべきだと思うが。

別の方法としては, Dwyer と Kan [DK80c; DK80a; DK80b] の hammock localization がある。

  • hammock localization

2つの object を結ぶジグザグの morphism の列から成る simplicial set を 考えることにより model category から simplicial category を作るのがアイデアである。

Simplicial category は simplicial set の category で enrich された圏なので, simplicial set の homotopy を用いて homotopy category を定義できる。

このように, 「homotopy の概念を持つ圏」で enrich されている圏では, homotopy category が定義できる。

他にも, \((\infty ,1)\)-category のように, homotopy category を定義できる場合は色々ある。

  • \((\infty ,1)\)-category の homotopy category

References

[DK80a]

W. G. Dwyer and D. M. Kan. “Calculating simplicial localizations”. In: J. Pure Appl. Algebra 18.1 (1980), pp. 17–35. url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(80)90113-9.

[DK80b]

W. G. Dwyer and D. M. Kan. “Function complexes in homotopical algebra”. In: Topology 19.4 (1980), pp. 427–440. url: http://dx.doi.org/10.1016/0040-9383(80)90025-7.

[DK80c]

W. G. Dwyer and D. M. Kan. “Simplicial localizations of categories”. In: J. Pure Appl. Algebra 17.3 (1980), pp. 267–284. url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(80)90049-3.

[DS95]

W. G. Dwyer and J. Spaliński. “Homotopy theories and model categories”. In: Handbook of algebraic topology. Amsterdam: North-Holland, 1995, pp. 73–126. url: http://dx.doi.org/10.1016/B978-044481779-2/50003-1.

[Hov99]

Mark Hovey. Model categories. Vol. 63. Mathematical Surveys and Monographs. Providence, RI: American Mathematical Society, 1999, p. xii 209. isbn: 0-8218-1359-5.