CW複体をはじめとしたcell complex

古い代数的トポロジーの本では,「空間\(=\)CW複体」という立場で書かれたもの が多い。一般の位相空間ではなくCW複体を用いるのにはいくつか理由がある。

  1. 多様体など, 重要な空間はCW複体の構造を持つ 場合が多い。
  2. CW複体に関する命題は胞体の数や次元に関する帰納法で証明できること が多い。
  3. CW複体の古典的なホモロジーは, CW 複体の胞体構造を用いて「生成元と関係式」で記述できる。

逆に言えば, 一般の位相空間を扱うのは難しいからCW複体に限定して考えてき たのである。

現在の代数的トポロジーは, かつてほどCW複体中心ではなくなっている。 モデル圏の視点から考えることが普及したこと も大きな理由の一つである。CW複体のホモトピー型を持つ空間の圏より, simplicial setの圏で考えた方が, モデル圏の 言葉を用いることができて理論的にスッキリする。

一方で, 単体的複体を始めとした有限 (regular) cell complexは, 組み合せ論の道具や 研究対象として, 重要な役割を果すようになってきている。Kozlovらにより topological combinatorics という 分野が急速に発展してきており, 代数的トポロジーの視点からも別の視点から cell complex について知っておく必要が出てきた。そのような分野では, hyperplane arrangementによる分割のように cellular decomposition より一般的な disk への分割も扱う必要がある。 そのために, [Tam18] で cellular stratified space というものを 導入してみた。

また, 複雑なデータを表わすのに低次元の cell complex を用いることもある。 代表的なものは, \(1\)次元の cell complex, つまりグラフ である。より高次元のものとしては, 例えばtopological quantum field theoryなどで使われる図がある。Khovanov は [Kho04]で quantum \(\mathfrak{sl}(3)\) link invariant の categorificationの構成の際に foam という \(\R ^3\) に埋め込まれた\(2\)次元 cell complex を用いている。

重要な空間については, その胞体分割を知っておくとよいと思う。特に,「良い 分割」を。

胞体分割できる空間の代表的なものは多様体である。 関連してMorse理論を勉強しておくとよい, と思う。特に, Forman の discrete Morse theoryはCW複体のcellの数を最 適化する手法であり, CW複体の理解を深めてくれる。

CW複体 (胞体複体) は, diskを張り合わせて作られた空間であるが, diskに限 らずある特定の空間を張り合わせてできる空間を考える, あるいはその様な張 り合わせに分割することを考えることもできる。例えば, 群 \(G\) の作用を持つ 空間については, \(G\)-CW complexという構造が考えられている。Lückの本 [Lüc89]で扱われている。

  • \(G\)-CW complex

より一般の空間を貼り合せたものとして Minian と Ottina [MO06; MO08]の \(\mathrm{CW}(A)\)-complex という ものもある。Ottina は [Ott11] でホモロジー群などを, [Ott16]で model structure を考 えている。

  • \(\mathrm{CW}(A)\)-complex

よりホモトピー論的なアプローチとしては cellularizationというものがある。

Operator algebraの視点から“self-similar CW-complex”という概念が[CGI]で定義されている。簡単に 言えば, \(L^2\)-Betti numberなどの\(L^2\)不変量が定義でき るような空間である。

ホモロジーを取り出すためなら, 実際の位相空間は必要ない。“胞体の集合” とincidence numberがあればよい。その視点で, Lefschetz complex という構 造が Mrozek の [Mro17]で定義されている。

  • Lefschetz complex

Lefschetz の本 [Lef42] に登場するのでそのように名付けられ たようである。

References

[CGI]

Fabio Cipriani, Daniele Guido, and Tommaso Isola. A \(C^*\)-algebra of geometric operators on self-similar CW-complexes. Novikov-Shubin and \(L^2\)-Betti numbers. arXiv: math/0607603.

[Kho04]

Mikhail Khovanov. “sl(3) link homology”. In: Algebr. Geom. Topol. 4 (2004), pp. 1045–1081. arXiv: math/0304375. url: http://dx.doi.org/10.2140/agt.2004.4.1045.

[Lef42]

Solomon Lefschetz. Algebraic Topology. American Mathematical Society Colloquium Publications, v. 27. New York: American Mathematical Society, 1942, pp. vi+389.

[Lüc89]

Wolfgang Lück. Transformation groups and algebraic \(K\)-theory. Vol. 1408. Lecture Notes in Mathematics. Mathematica Gottingensis. Berlin: Springer-Verlag, 1989, pp. xii+443. isbn: 3-540-51846-0.

[MO06]

Gabriel Minian and Miguel Ottina. “A geometric decomposition of spaces into cells of different types”. In: J. Homotopy Relat. Struct. 1.1 (2006), pp. 245–271. arXiv: math/0612254.

[MO08]

Elias Gabriel Minian and Enzo Miguel Ottina. “A geometric decomposition of spaces into cells of different types. II. Homology theory”. In: Topology Appl. 155.16 (2008), pp. 1777–1785. url: https://doi.org/10.1016/j.topol.2008.05.015.

[Mro17]

Marian Mrozek. “Conley-Morse-Forman theory for combinatorial multivector fields on Lefschetz complexes”. In: Found. Comput. Math. 17.6 (2017), pp. 1585–1633. arXiv: 1506.00018. url: https://doi.org/10.1007/s10208-016-9330-z.

[Ott11]

Enzo Miguel Ottina. “\(A\)-homology, \(A\)-homotopy and spectral sequences”. In: J. Homotopy Relat. Struct. 6.1 (2011), pp. 161–173. arXiv: 1104.3726.

[Ott16]

Miguel Ottina. “An \(A\)-based cofibrantly generated model category”. In: Topology Appl. 197 (2016), pp. 60–74. arXiv: 1405.2086. url: https://doi.org/10.1016/j.topol.2015.10.015.

[Tam18]

Dai Tamaki. “Cellular stratified spaces”. In: Combinatorial and toric homotopy. Vol. 35. Lect. Notes Ser. Inst. Math. Sci. Natl. Univ. Singap. World Sci. Publ., Hackensack, NJ, 2018, pp. 305–435. arXiv: 1609.04500.