Categorification

21世紀になって, “categorification” という言葉がよく聞かれるようになった。 90年代半ばに Crane が考えた [Cra95; CF94] 概念らしい。 有名になったのは, Khovanov による Jones polynomial の categorification の発見からだろうか。

ある (small) category \(C\) の decategorification とは, 集合 \(S\) と \(C\) の object の集合から \(S\) への写像 \[ d : C_{0} \rarrow {} S \] で, 同型な object を同じ元にうつすものの組 \((S,d)\), あるいは写像 \(d\) のことである。 そして, このとき \(C\) を \(S\) の categorification と呼ぶ。 これが, 最も素朴な categorification のアイデアである。

  • decategorification

なので, categorification には様々な選択肢がある。 例えば, 非負整数の集合の categorification としては, cardinality を decategorification とした有限集合の category があるが, 他にも, 次元を decategorification とした有限次元ベクトル空間の category もある。

また, \(C\) が monoidal category など構造を持った category のときには, \(S\) にも対応する構造を考える。 他にも様々な変種がある。

有限集合の category の decategorification は, 物を数えるということだから, 古くから人類が行なってきたことである。このように, categorification という言葉は使わなくても, 同じようなアイデアは古くから使われている。 例えば, Propp の [Pro] に収録されている最初の論文は

A combinatorialist’s fundamental model of a non-negative integer \(n\) is a set of \(n\) points.

という一文で始まっている。Zeilberger [Zei] は, 自然数の間の等式や不等式を, 有限集合の間の全単射や単射を構成することにって証明することを combinatorialization と呼んでいるが, このように 組み合せ論では, 自然数を有限集合で置き換えることは, 古くから考えられてきた。これも立派な categorification である。

一般に categorification についての解説として [BD98] があるので, まずはこれを読んでみるといいだろう。他には, [CY98] や [Ion], そして [BD01] も見るとよい。

その他, categorification に関連した話題は次のページにまとめた。

また categorification という言葉は, “horizontal categorification” としても使われることがある。これは, ある代数的構造が object \(1\)つの small category とみなせるとき, object を複数にした構造を意味する。

  • horizontal categorification あるいは many-objectification

例えば, groupoidの many-objectification である。このように, many-objectification したものには “-oid” を付けることが多い。

References

[BD01]

John C. Baez and James Dolan. “From finite sets to Feynman diagrams”. In: Mathematics unlimited—2001 and beyond. Berlin: Springer, 2001, pp. 29–50. arXiv: math/0004133.

[BD98]

John C. Baez and James Dolan. “Categorification”. In: Higher category theory (Evanston, IL, 1997). Vol. 230. Contemp. Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 1998, pp. 1–36. arXiv: math/9802029.

[CF94]

Louis Crane and Igor B. Frenkel. “Four-dimensional topological quantum field theory, Hopf categories, and the canonical bases”. In: J. Math. Phys. 35.10 (1994). Topology and physics, pp. 5136–5154. url: http://dx.doi.org/10.1063/1.530746.

[Cra95]

Louis Crane. “Clock and category: is quantum gravity algebraic?” In: J. Math. Phys. 36.11 (1995), pp. 6180–6193. url: http://dx.doi.org/10.1063/1.531240.

[CY98]

Louis Crane and David N. Yetter. “Examples of categorification”. In: Cahiers Topologie Géom. Différentielle Catég. 39.1 (1998), pp. 3–25. arXiv: q-alg/9607028.

[Ion]

Lucian M. Ionescu. On Categorification. arXiv: math/9906038.

[Pro]

James Propp. Euler measure as generalized cardinality. arXiv: math/ 0203289.

[Zei]

Doron Zeilberger. \(5\choose 2\) Proofs that \({n\choose k} \leq {n\choose {k+1}}\) if \(k<n/2\). arXiv: 1003.1273.