2次以上の morphism が可逆な高次の圏

Lurie [Lur09] のおかげで, 高次の圏も一般的になってきた。

かつて, 圏論の研究者が考えていた高次の圏は, bicategorytricategory のように, 高次の morphism を持ち, それらの合成の結合法則や単位元の条件が up to isomorphism で成り立つように弱められ, 更にそれらの isomorphism がある coherence condition を満し, というようなものだった。Object (\(0\)-morphism) と morphism (\(1\)-morphism) に \(2\)-morphism, \(3\)-morphism と追加していって \(n\)-morphism まで考え, それらがどのような条件を満すべきかが重要な問題だった。

一方, Joyal らが考え, Lurieにより一般的になった \((\infty ,1)\)-categoryは, 全ての\(n\)に対し \(n\)-morphism が存在するが, \(n\ge 2\) 以上 の \(n\)-morphism は全て可逆であると仮定されるものである。 Lurie は, 単に \(\infty \)-category と呼んでいるが, 正確には \((\infty ,1)\)-category と呼ぶべきだろう。

文献としては, まず Lurie の本 [Lur09] を挙げるべきだろうが, 最近は他にも色々解説が書かれている。 Bergner の解説 [Ber10], Camarena の [Cam], Riehl と Verity の lecture note [RVb], Hinich の lecture note [Hin] など。

現代数学では同型なものを同一視するのが基本だから, その意味では本質的なのは \(1\)-morphism (の同型類) であり, 一般の \(n\)-category より, 通常の圏に近いものである。

そのような \((\infty ,1)\)-category の model としては, 最も有名なのは quasicategory だろう。他にも, simplicial setenrich された圏である simplicial category や, Segal category, そして complete Segal space などがある。

これらは, quasicategory も含め model category として全て同値であることが知られている。最初の3つと quasicategory の関係については, Bergner の解説 [Ber10] をみるとよい。 Camarena の \((\infty ,1)\)-category についての survey [Cam] にもまとめられている。

位相空間の圏と simplicial set の圏は model category として同値なので, 位相空間の圏で enrich された圏である topological category も同じ目的で使えるのは, 当然と言えば当然である。例えば, Lurieの本 [Lur09] でも登場する。 Topological category の category の model structure の構成と他のモデルとの関係については, Amrani の [Ili15] で調べられている。 最後のものについては, Horel の [Hor] で model structure が定義され, 他の model と Quillen 同値であることが示されている。

これらを統一的に扱うために, Riehl と Verity [RVa] は \(\infty \)-cosmos という概念を導入した。これは simplicially enriched category で, ある条件をみたすものとして定義される。その object が \((\infty ,1)\)-category と呼ばれるべきものである。 上記のものの成す圏は全て \(\infty \)-cosmos になる, らしい。

  • \(\infty \)-cosmos

Lurieは, 例えば [Lurc] で, \((\infty ,1)\)-category の応用として sheaf cohomology と cohomology のホモトピー集合としての表示の関係の一般化を考えている。 [Lura] では, ホモロジー代数に現れる \((\infty ,1)\)-category, つまり chain complex の圏からできる \((\infty ,1)\)-category の一般化を考えている。 ホモトピー圏を取ると triangulated category になるものなので, いわゆる enhanced triangulated category の一つのモデルとなっている。

Enhanced triangulated category として良く使われるのは, (pretriangulated) dg category であるが, dg category から \((\infty ,1)\)-category を作ることもできる。Lurie の [Lurb] にも登場するが, Dyckerhoff, Kapranov, Soibelman の [DKS] によると, Hinich と Schechtman [HS87] により simplicial set として定義されたのが最初のようである。Dyckerhoff らは dg nerve と呼んでいる。 その \(A_{\infty }\)-版が, Foante の [Fao17] で導入されている。

  • dg nerve
  • \(A_{\infty }\)-nerve

これらの様々な \((\infty ,1)\)-category のモデルの特徴付けとして, Toën [Toë05] は, model category が complete Segal space の成す model category と Quillen 同値になるための7つの公理を発見した。つまり, これらの7つの公理をみたす model category は, 全て \((\infty ,1)\)-category の category のモデルと考えられるということである。

\((\infty ,1)\)-category に対し, monoidal structure などの通常のcategory theory の概念を拡張することは, 当然考えられている。

\((\infty ,1)\)-category は, \(2\)次元以上の morphism が up to homotopy で inverse を持つものであるが, 高次の圏のモデルとして, \((n+1)\) 次元以上の morphism を invertible にした \((\infty ,n)\)-category も考えられている。

\(\infty \) までいかず, また \(1\) よりも上の次元の morphism が invertible であるもの, つまり \((n+k,k)\)-category については, Rezk が [Rez10] で考えている。そこでは Joyal の \(\Theta _n\) が使われている。\(k=1\) で \(n=-1\) のとき, つまり \((0,1)\)-category は poset とみなすべきもののようである。

Simplicial setcubical set にしたモデルは, Kachour [Kac] により考えられている。\((\infty ,n)\)-category のモデルも導入されている。

  • cubical weak \((\infty ,n)\)-category

Simplicial setdendroidal set に変えること により, multicategory の \(\infty \) 版も考えられている。Cisinski と Moerdijk の [CT12] である。 \(\infty \)-multicategory よりも \(\infty \)-operad という用語の方が一般的なようである。

  • dendroidal Segal space
  • dendroidal Segal category

更に, properad への一般化も Hackney, Robertson, Yau [HRY15] により考えられている。

  • \(\infty \)-properad

応用は多岐にわたるが, 有名なのは extended TQFT, derived algebraic geometry, homotopy type theory などだろう。 より幾何学的な応用として, Savelyev の [Sava; Savb] などがある。 確率論 [Gaua] や 低次元トポロジー [Gaub] に使おうとしている人もいるが, 普及するだろうか。

群論を連結な基点つき \((\infty ,1)\)-groupoid に拡張しようという人 [PS17] もいる。Sylow の定理の類似などが考えられている。

References

[Ber10]

Julia E. Bergner. “A survey of \((\infty ,1)\)-categories”. In: Towards higher categories. Vol. 152. IMA Vol. Math. Appl. New York: Springer, 2010, pp. 69–83. arXiv: math/0610239. url: http://dx.doi.org/10.1007/978-1-4419-1524-5_2.

[Cam]

Omar Antolı́n Camarena. A Whirlwind Tour of the World of \((\infty ,1)\)-categories. arXiv: 1303.4669.

[CT12]

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[DKS]

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[Fao17]

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[Gaua]

Renaud Gauthier. Algebraic Stochastic Calculus. arXiv: 1407.6784.

[Gaub]

Renaud Gauthier. Infinity Links \(L\), infinity-4-Manifolds \(M_L\) and Kirby Categories. arXiv: 1309.7514.

[Hin]

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[HRY15]

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[HS87]

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[Ili15]

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[Kac]

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[Lurc]

Jacob Lurie. On Infinity Topoi. arXiv: math/0306109.

[Lur09]

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[PS17]

Matan Prasma and Tomer M. Schlank. “Sylow theorems for \(\infty \)-groups”. In: Topology Appl. 222 (2017), pp. 121–138. arXiv: 1602.04494. url: https://doi.org/10.1016/j.topol.2017.03.004.

[Rez10]

Charles Rezk. “A Cartesian presentation of weak \(n\)-categories”. In: Geom. Topol. 14.1 (2010), pp. 521–571. arXiv: 0901.3602. url: http://dx.doi.org/10.2140/gt.2010.14.521.

[RVa]

Emily Riehl and Dominic Verity. Fibrations and Yoneda’s lemma in an \(\infty \)-cosmos. arXiv: 1506.05500.

[RVb]

Emily Riehl and Dominic Verity. Infinity category theory from scratch. arXiv: 1608.05314.

[Sava]

Yasha Savelyev. Global Fukaya category and quantum Novikov conjecture I. arXiv: 1307.3991.

[Savb]

Yasha Savelyev. Global Fukaya category and the space of \(A_\infty \) categories II. arXiv: 1408.3250.

[Toë05]

Bertrand Toën. “Vers une axiomatisation de la théorie des catégories supérieures”. In: \(K\)-Theory 34.3 (2005), pp. 233–263. arXiv: math/0409598. url: http://dx.doi.org/10.1007/s10977-005-4556-6.