Magnitude

Magnitude とは, Leinster により poset の Möbius function を small category の Euler 標数に拡張する過程で発見された概念である。 そのアイデアのもととなったのは, Lawvere [Law73] による metric spaceenriched category とみなすことができる, という発見である。

最初のアナウンスは, この \(n\)-Category Café での post であり, finite metric space を非負の実数の成す poset で enrich された finite small category とみなし, その Euler 標数を考えることを提案している。 それが論文になったのが, Leinster と Willerton の [LW13] である。 Leinster と Meckes によるまとめ [LM17] もある。

Leinster がまとめた magnitude に関する文献のリストもある。

Gimperlein と Goffeng は, magnitude を用いて Euclid空間の部分集合 \(X\) に対し, 複素平面上で定義された meromorphic function \(\cM _{X}\) を [GG21] で定義している。それを展開したときの係数は, \(X\) の体積等と関係あるようで興味深い。

より一般には, object の集合上に定義された実数値関数 \(|-| : \bm {V}_0 \to \R \) を持つ (small) monoidal category \(\bm {V}\) で enrich された small category に対し定義される。\(\bm {V}\) が有限集合の圏で \(|-|\) が cardinality のときが, finite category の Euler 標数になる。

Willerton は, [Wil] で色々計算を行なっている。 生物学の文献 [SP94] にも独立に登場しているらしい。

Leinster らは, 有限距離空間以外にも様々な具体的な構造へ適用している。

  • compact metric space の magnitude
  • グラフ の magnitude ([Lei19])
  • 有限次元代数の magnitude ([CKL16])

グラフの magnitude は, \(\Q \)係数 rational function に値を持つグラフの不変量である。それは, Hepworth と Willerton [HW17] により, Khovanov homology 流の categorification を持つことが示されている。

  • グラフの magnitude homology

Willerton は, この \(n\)-Category Café の post で, graph の magnitude homology について, homology に慣れた人なら疑問に思うだろうこととして, 次の2つを挙げている。

  1. magnitude が同じであるが, magnitude homology が異なる graph があるか?
  2. magnitude homology が torsion を持つ graph があるか?

最初の疑問については, Willerton によるその前の post に対する Yuzhou Gu のコメントで解決された。 2つめの疑問については, Kaneta と Yoshinaga の論文 [KY21] で解決された。

グラフの性質を調べるのに使えないか, というのは自然な疑問であるが, そのために, この \(n\)-Category Café の post で, Eulerian magnitude homology が定義されている。

  • Eulerian magnitude homology

Leinster は \(n\)-Category Caféでの議論を元に, グラフの magnitude ホモロジーの一般の enriched category への拡張を考えている。 この \(n\)-Category Café の記事で詳しく説明している。 その decategorification が magnitude になっているらしい。

  • enriched category の magnitude ホモロジー

Enriched category として, 代数で良く使われるのは linear category, つまりベクトル空間の圏で enrich された圏であるが, 有限次元ベクトル空間に対しては, 次元という関数がある。それを用いた linear category の magnitude を有限次代数の表現論に使おうというのは自然なアイデアである。

実際, Leinster の Chuang と King との共同プロジェクト [CKL16] がある。 有限次元代数 \(A\) に対し, \(A\) 上の indecomposable projective module の成す linear category \(\category {IP}(A)\) を考え, その magnitude の simple \(A\)-module を用いたホモロジー代数的な記述を得ている。

コホモロジー版は Hepworth が [Hep22] で導入し調べている。

  • magnitude cohomology

References

[CKL16]

Joseph Chuang, Alastair King, and Tom Leinster. “On the magnitude of a finite dimensional algebra”. In: Theory Appl. Categ. 31 (2016), Paper No. 3, 63–72. arXiv: 1505.04281.

[GG21]

Heiko Gimperlein and Magnus Goffeng. “On the magnitude function of domains in Euclidean space”. In: Amer. J. Math. 143.3 (2021), pp. 939–967. arXiv: 1706.06839. url: https://doi.org/10.1353/ajm.2021.0023.

[Hep22]

Richard Hepworth. “Magnitude cohomology”. In: Math. Z. 301.4 (2022), pp. 3617–3640. arXiv: 1807.06832. url: https://doi.org/10.1007/s00209-022-03013-8.

[HW17]

Richard Hepworth and Simon Willerton. “Categorifying the magnitude of a graph”. In: Homology Homotopy Appl. 19.2 (2017), pp. 31–60. arXiv: 1505.04125. url: https://doi.org/10.4310/HHA.2017.v19.n2.a3.

[KY21]

Ryuki Kaneta and Masahiko Yoshinaga. “Magnitude homology of metric spaces and order complexes”. In: Bull. Lond. Math. Soc. 53.3 (2021), pp. 893–905. arXiv: 1803 . 04247. url: https://doi.org/10.1112/blms.12469.

[Law73]

F. William Lawvere. “Metric spaces, generalized logic, and closed categories”. In: Rend. Sem. Mat. Fis. Milano 43 (1973), 135–166 (1974).

[Lei19]

Tom Leinster. “The magnitude of a graph”. In: Math. Proc. Cambridge Philos. Soc. 166.2 (2019), pp. 247–264. arXiv: 1401. 4623. url: https://doi.org/10.1017/S0305004117000810.

[LM17]

Tom Leinster and Mark W. Meckes. “The magnitude of a metric space: from category theory to geometric measure theory”. In: Measure theory in non-smooth spaces. Partial Differ. Equ. Meas. Theory. De Gruyter Open, Warsaw, 2017, pp. 156–193. arXiv: 1606. 00095.

[LW13]

Tom Leinster and Simon Willerton. “On the asymptotic magnitude of subsets of Euclidean space”. In: Geom. Dedicata 164 (2013), pp. 287–310. arXiv: 0908.1582. url: http://dx.doi.org/10.1007/s10711-012-9773-6.

[SP94]

A. Solow and S. Polasky. “Measuring biological diversity”. In: Environmental and Ecological Statistics 1 (1994), pp. 95–107.

[Wil]

Simon Willerton. Heuristic and computer calculations for the magnitude of metric spaces. arXiv: 0910.5500.