線形代数

Dieudonnéの本[Die89]によると, 1930年代の数学者達が Poincaréの漠然としたアイデアをホモロジー とい う概念として定式化しようとしたとき, 中心的な役割を果したのは Emmy Noether だったらしい。また, van der Waerden の本 [Wae85] によると, Noether は線形代数を現代の形に整理した人でもある。

線形代数とは要するに体上の加群の理論であるから, 代数的トポロジーでも体 係数のホモロジー群を扱うときには必要になる。特に, コホモロジーとの関係で dualityを理解している必要がある。 一般コホモロジー, 特に nonconnective なものを扱うときには, 無限次元のvector space, またそれらに filtration を入れたものが必要になる。そして filtration が入ると, 位相が定義される。

線形代数に直接関連した話題としては, 行列群の知識があるとよい。\(O(n)\)や \(U(n)\)などの古典群や \(G_2, F_4, E_6, E_7, E_8\)の 例外群は, 様々な 重要な例や問題の宝庫である。ただし古典群でも, 四 元数のように非可換な体上で線形代数をすることもあるので注意が必要である。 例外群の場合は, 八元数体のような結合律も使えない 状況で計算しなければならない。

最近では, “1個の元から成る体 \(\F _1\)” 上の線形代数も必 要になってきた。直接球面の安定ホ モトピー群と関係あるようで, その関係がはっきりしたら重要な道具になりそ うである。

他にもベクトル束, そして幾何学的に \(K\)理論を扱う際には, 当然線形代数の知識が不可欠である。

また一次従属性からは matroidという概念が得られ hyperplane arrangementグラ フなど, 各種組み合せ論的構造を調べる上で重 要である。

他にも色々面白い話題はある。

References

[Die89]

Jean Dieudonné. A history of algebraic and differential topology. 1900–1960. Boston, MA: Birkhäuser Boston Inc., 1989, pp. xxii+648. isbn: 0-8176-3388-X.

[Wae85]

B. L. van der Waerden. A history of algebra. From al-Khwārizmı̄ to Emmy Noether. Berlin: Springer-Verlag, 1985, pp. xi+271. isbn: 3-540-13610-X.