Generalized (Co)homology Theories or Axiomatic (Co)homology Theories

特異(コ)ホモロジーは, Eilenberg と Steenrod により, 有名な本 [ES52] の中で公理化された。

その後, \(K\)理論コボルディズムの発見により, Eilenberg-Steenrod の公理は修正を迫られることとなった。 簡単に言えば, \(K\)理論やコボルディズムを含むように Eilenberg-Steenrod の公理を修正した条件をみたすものが一般(コ)ホモロジーである。つまり Eilenberg-Steenrod の公理から 次元公理を除いたものである。

更に, Milnor [Mil62] により加法性公理を要求することが提案された。 現在では, 加法性公理を仮定するのが普通である。 Milnor の論文でも参照されているが, 加法性公理をみたさないホモロジーの例としては, James と Whitehead [JW58] により構成された homology with zero coefficients がある。

このような公理を用いて定義される(コ)ホモロジーは, かつては Eilenberg-Steenrod の公理を一般化するものという意味で, 一般(コ)ホモロジー (generalized (co)homology) と呼ばれていた。 その時代の本として, Adams の本 [Ada74] と荒木の本 [荒木捷75] がある。Swizter の本 [Swi75] もある。

現在では, これらの(コ)ホモロジーの公理が標準的なので, 「一般」という形容詞は付けず, 単に(コ)ホモロジー論と呼ぶのが良いと思う。

これらの1970年代に書かれた本は悪い本ではないし, 逆に Adams の本は, (コ)ホモロジー論を勉強するなら一度は読んでおくべき本であるが, 残念ながら扱いが古いので, まずは, May の本 [May99] を読むのがよい, と思う。より幾何学的な視点から書かれた本としては, Rudyak の本 [Rud98] もある。

ここで, (コ)ホモロジーといったときに, 空間対の(コ)ホモロジーと基点付き空間の(コ)ホモロジーの2種類があることに, 注意する必要がある。それぞれに公理が定まっている。 また, 空間対の(コ)ホモロジーについては, 位相空間対全体で定義された(コ)ホモロジーと CW 対に対して定義された(コ)ホモロジーがある。 基点付き空間の(コ)ホモロジーについては, 基点を持つ空間全体で定義されたコホモロジーと基点付き CW 複体に対して定義された(コ)ホモロジーがある。 このように4種類の(コ)ホモロジーがあり, それぞれに公理が異なるのであるが, そのことを明示した文献は多くない。May の本 [May99] ぐらいだろうか。

  • 位相空間対の(コ)ホモロジーの公理
  • CW対の(コ)ホモロジーの公理
  • 基点付き空間の(コ)ホモロジー (被約(コ)ホモロジー) の公理
  • 基点付きCW複体の(コ)ホモロジー (被約(コ)ホモロジー) の公理

もちろん位相空間対とCW対の場合の公理は似ているし, 基点付き空間と基点付きCW複体の場合の公理も似ている。

まず, 空間対の場合は, 以下の4つの条件を公理としている。

  • 完全性
  • (弱)ホモトピー同値不変性
  • 切除同型
  • 加法性

気をつけるべきなのは, CW対の場合のホモトピー同値不変性が, 位相空間対の場合は 弱ホモトピー同値不変性になることである。 また切除同型についても, CW対の場合は部分複体を用いて記述されるので, 条件が大きく異なる。

具体的内容については, 例えば, May の本 [May99] の Chapter 13 を見るのが良いと思う。 そこで扱われているのは, Eilenberg-Steenrod の公理の現代版なので, 次元公理が入っているが, そこから次元公理を除いたものが, 空間対の一般ホモロジーの定義である。

空間対の(コ)ホモロジーを CW対に制限することにより CW対の(コ)ホモロジーが得られることはすぐ分かるが, 逆にCW対の(コ)ホモロジーを空間対の(コ)ホモロジーに拡張することもできる。 そのためには, CW近似を用いる。

  • CW近似
  • CW対の(コ)ホモロジーと位相空間対の(コ)ホモロジーの対応

基点付き空間の場合の公理は, 以下の4つである。

  • 完全性
  • (弱)ホモトピー同値不変性
  • 懸垂同型
  • 加法性

ここでも, 対象が基点付き空間か基点付き CW 複体かで, 弱ホモトピー同値不変性を要求するかホモトピー不変性を要求するかが異なる。 また, 基点付き空間の場合の完全性は, 長い完全列ではなく, 包含 \(i:A\hookrightarrow X\) に対する完全列 \[ \tilde {h}_{n}(A) \rarrow {i_{*}} \tilde {h}_{n}(X) \rarrow {} \tilde {h}_{n}(X/A) \] を要求するが, 一般の基点付き空間の場合は, \(i\) が cofibration であることを要求する。 基点付きCW複体の場合は, 部分複体の包含が自動的に cofibration になるので, cofibration という言葉が公理に出てくることはないが。

3項の完全列しか要求しないのは, 任意の連続写像が, 長い cofiber 列, いわゆる Puppe sequence に拡張できるからである。 それと懸垂同型を組合せれば, 長い完全列が得られる。

基点付き空間の場合の公理についても, May の本 [May99] に書かれている。 次元公理を仮定したものであるが。 Chapter 14 の section 4 である。

やはり, CW近似を用いて, 基点付き CW複体の(コ)ホモロジーを基点付き空間の(コ)ホモロジーに拡張することができる。

  • 基点付きCW複体の(コ)ホモロジーと基点付き空間の(コ)ホモロジーの対応

そして, 空間対の(コ)ホモロジーと基点付き空間の(コ)ホモロジーの対応を理解しておくべきである。 これについても, May の本を読むのが良いと思う。

  • 空間対の(コ)ホモロジーと基点付き空間の(コ)ホモロジーの対応

Milnor が [Mil62] で加法性を仮定したのは, コホモロジーと colimit の関係を明示したかったからである。 コホモロジーは colimit を limit に変換するのではなく, その「余り」として, limit の first derived functor が現れることを発見した。

  • Milnor の \({\lim }^{1}\) sequence

基点付き空間の(コ)ホモロジーの公理に 弱ホモトピー同値cofibration が登場することから, モデル圏 (やその一般化) の上でも(コ)ホモロジー論が定義できる。 そのようなものとしては, Basterra と Mandell の [BM05] で定義されているものがある。 \(E_{\infty }\)-ring spectrum の圏の上のコホモロジー論について調べるのがこの論文の目的であるが。

懸垂同型により, ホモロジー論は必然的に安定ホモトピー論的な情報を取り出す関手となる。よって stable model category, あるいは triangulated category から Abelian category への関手として考えるのは自然である。 そのようなホモロジー論的関手の性質を考察したものとしては, Biedermann の [Bie07] がある。

定義を理解した後は, もちろん, 例をなるべく沢山勉強すべきである。

(コ)ホモロジー論と関連の深い概念として, スペクトラム (spectrum) がある。 スペクトラムを用いると, 一般(コ)ホモロジーがスペクトラムの圏のホモトピー集合として表わされる。 コホモロジーの場合は, Brown の表現定理という名前が付いている。

1970年代に構成された, 古典的なスペクトラムの圏 (例えば Adams の本 [Ada74] の定義) は, homotopy category を取らないと, symmetric monoidal category にできないものだった。 その点を改良した「正しい」スペクトラムの圏の候補が, 90年代にいくつか構成された。 現在では, それらの圏で議論するのが普通である。

(コ)ホモロジー論を計算する道具としては, まず Atiyah-Hirzebruch spectral sequence を知っておくべきだろう。

他にも色々 スペクトル系列はあるが, 実際に計算に使えるものはそう多くはない。

公理的なコホモロジー論でもコホモロジー作用素は重要である。

群の作用を持つ空間に対しては, equivariant (co)homology が定義される。

References

[Ada74]

J. F. Adams. Stable homotopy and generalised homology. Chicago, Ill.: University of Chicago Press, 1974, p. x 373.

[Bie07]

Georg Biedermann. “Interpolation categories for homology theories”. In: J. Pure Appl. Algebra 208.2 (2007), pp. 497–530. arXiv: math/0412388. url: http://dx.doi.org/10.1016/j.jpaa.2006.01.016.

[BM05]

Maria Basterra and Michael A. Mandell. “Homology and cohomology of \(E_\infty \) ring spectra”. In: Math. Z. 249.4 (2005), pp. 903–944. arXiv: math/0407209. url: https://doi.org/10.1007/s00209-004-0744-y.

[ES52]

Samuel Eilenberg and Norman Steenrod. Foundations of algebraic topology. Princeton, New Jersey: Princeton University Press, 1952, p. xv 328.

[JW58]

I. M. James and J. H. C. Whitehead. “Homology with zero coefficients”. In: Quart. J. Math. Oxford Ser. (2) 9 (1958), pp. 317–320.

[May99]

J. P. May. A concise course in algebraic topology. Chicago Lectures in Mathematics. Chicago, IL: University of Chicago Press, 1999, pp. x+243. isbn: 0-226-51182-0.

[Mil62]

J. Milnor. “On axiomatic homology theory”. In: Pacific J. Math. 12 (1962), pp. 337–341. url: http://projecteuclid.org/euclid.pjm/1103036730.

[Rud98]

Yuli B. Rudyak. On Thom spectra, orientability, and cobordism. Springer Monographs in Mathematics. With a foreword by Haynes Miller. Berlin: Springer-Verlag, 1998, pp. xii+587. isbn: 3-540-62043-5.

[Swi75]

Robert M. Switzer. Algebraic topology—homotopy and homology. Die Grundlehren der mathematischen Wissenschaften, Band 212. Springer-Verlag, New York-Heidelberg, 1975, pp. xii+526.

[荒木捷75]

荒木捷朗. 一般コホモロジー. Vol. 4. 紀伊國屋数学叢書. 東京: 紀伊國屋書店, 1975.