Fiberwise Topology

Grothendieck は, scheme \(B\) の上の scheme \(X\), つまり写像 \[ X \longrightarrow B \] を考えることで, 代数幾何学に相対 (relative) という概念を導入した。代数的トポロジーでは包含写像 \[ A \hookrightarrow X \] により, 位相空間対 を扱ってきた。その双対概念が, 空間 \(B\) の上の空間 \(X\) \[ X \longrightarrow B \] を考えることである。この写像のことを, \(B\) 上の空間という。

  • \(B\) 上の空間
  • \(B\) 上の空間の間の morphism
  • \(B\) 上の空間の間の morphism の間の homotopy

これは位相空間対ほど一般的ではないが, やはり代数的トポロジーで重要な役割を果す概念である。 1950〜60年代には, ファイバー束fibration を考えるときに, それらを1つの object として考えると便利であることが, 次第に認識されるようになってきたし, “fiberwise (ファイバー毎)” の操作行うことも考えられてきた。更に, その後以下のような応用が発見されている:

  • Larry Smith による cobar型 Eilenberg-Moore spectral sequence の構成 [Smi70b; Smi70a]
  • Goodwillie calculus では, “原点以外の点の周りの Taylor tower” を考えようとすると, fiberwise に考える必要が出てくる。
  • Dunn [Dun88] による little \(n\)-cubes operad の\(1\)-cubes operad の\(n\)個の tensor product への分解。
  • Fiedorowicz [Fie84] によると, Moore loop space は, \(\R _{\ge 0}\) 上の空間とみなすのが自然である。 その adjoint として Moore suspension が定義される。 Moore loop space を単に位相空間とみなすと adjoint を持たないことから, \(\R _{\ge 0}\) 上の空間が本質的に必要になる。
  • 底空間が無限次元の場合の transfer の構成 [Cla81]。
  • twisted cohomology の定義域としての fiberwise space や ex-space など。

また基点付き空間の類似もあり, James により ex-space と名付けられている。Reduced twisted cohomology theory を考える際には, その定義域は, 基点付き位相空間の fiberwise版, つまり ex-space と考えるのが自然である。そして “ex-spectrum” あるいは parametrized spectrum を用いて cohomology を定義するのべきだろう。

それを行っているのが, Waldmüller [Wal] であり, その最初の章には ex-space と ex-spectrum についての基本的な事柄がまとめられている。 その元になっているのは, May と Sigurdsson の [MS06] である。 ArXiv にもあるが, 出版されているものよりかなり古い version なので, May のホームページから download した方がよい。もっとも, ex-spectrum あるいは parametrized spectrum は, Clapp により [Cla81; CP84] で考えられたのが最初のようであるが。

他に基本的な文献としては, まず James の論文 [Jam71] が挙げられる。 Larry Smith の [Smi70b; Smi70a] にも, 基本的性質がかなり詳しく書いてある。Lewis は [Lew85] で ex-space の圏での exponential law が成り立つための条件などを調べている。

\(B\) 上の空間の圏や ex-space の圏では, 位相空間や基点付き位相空間に対して行なうほとんどの操作ができる。

  • fiberwise mapping cone
  • fiberwise suspension
  • fiberwise join
  • fiberwise smash product

Fiberwise join は, Strøm の [Str72] では generalized Whitney sum という名前で用いられている。

上に書いたように, \(B\) 上の空間の圏でも, (コ)ホモロジーが定義できる。 形式的に位相空間の圏上の (コ)ホモロジー論を拡張することもできるが, ある \(B\) に対し, その空間の上の fiberwise space (ex-space) の圏だけで定義されているものもある。例えば, twisted \(K\)-theory である。

  • (コ)ホモロジーの公理
  • \(K(\Z ,3)\) 上の空間の圏の上のコホモロジー論としての twisted \(K\)-theory

Larry Smith は, \(B\) 上の空間の圏の Künneth spectral sequence として, cobar型のEilenberg-Moore spectral sequence を構成した。McClendon [McC68] は, Adams spectral sequence の類似を考えている。

Singular cochain complex functor をとると, \(B\) 上の空間 \(X\) から \(S^*(B)\)-algebra \(S^*(X)\) ができる。これは古典的な Eilenberg-Moore spectral sequence の構成で必要となる事実である。またこのことに着目し, \(B\) 上の空間 \(X\) に対する不変量を定義したのが, Kuribayashi の [Kurb; Kura] である。

Fiberwise simplicial space を考えることもできる。 もちろん, fiberwise に幾何学的実現を取ることができる。 また fiberwise fibration や fiberwise fiber bundle を考えることもできるので, fiberwise principal bundle の分類も考えることができる。これらのことを考えているのは, Stevenson と Roberts の [RS] である。

  • fiberwise simplicial space とその fiberwise geometric realization
  • fiberwise principal \(G\)-bundle の分類定理

一般の圏でも, もちろんあるobject上のobjectの圏を考えることはできる。 Mac Lane の本では comma category と呼ばれている。

\(B\) 上の空間の圏でも, fibration や cofibration が定義されるので, モデル圏として考えるのが自然である。 これについては, Intermont と Johnson の仕事 [IJ02] がある。彼等は複数のモデル構造を考え,それらの比較も行なっている。

  • Lewis [Lew85] による open ex-space の圏
  • Intermont と Johnson による (open) ex-space の圏の coarse model structure
  • Intermont と Johnson による (open) ex-space の圏の fine model structure

より一般的な扱いとして, May と Sigurdsson の “parametraized homotopy theory” [MS06] がある。そこでは, 位相空間のモデル圏の Quillen によるモデル構造と, Strøm によるモデル構造を mix できるという Cole の結果 [Col06] が使われている。より一般に, topologically enriched category でホモトピー論を行う際の philosophy を与えているように思う。

更に一般に model category の comma category の model structure も考えられている。Hirschhorn の本 [Hir03] にあるが, そこで証明なしに述べられている性質については [Hir] で証明が与えられている。

Shulman の [Shu08] は, fiberwise space, 或は May らの用語では parametrized space と homotopy sheaf という概念を比較するものであるが, そこでは May-Sigurdsson の枠組みで議論されている。 Shulman の結果は, locally constant sheaf と被覆空間の間の対応を拡張する形で \(B\) 上の homotopy sheaf と \(B\) 上の fibration の対応を与え, 自然な感じがする。

Shulman [Shu08] は, Intermont と Johnson の fine model structure を用いているが, それは Lurie の [Lur09] の§7.1.2 で paracompact Hausdorff空間 \(X\) 上の parametrized space の category と \(X\) 上の simplicial sheaf の category を比較 (Quillen 同値になるように) するためにも用いられている。

最近は, モデル圏で行なわれていたことが, \((\infty ,1)\)-category の言葉に翻訳されることが多いが, parametrized homotopy theory も, 例外ではない。 Ando, Blumberg, Gepner の [ABG18] では, Kan complex \(S\) と \((\infty ,1)\)-category \(\bm{C}\) に対し, \(S\)上の \(\bm{C}\) の parametrized object の成す \((\infty ,1)\)-category が, “functor category” \(\category{Funct}(S^{\op },\bm{C})\) として, 定義されている。

どうして \(S^{\op }\) から \(\bm{C}\) への functor を \(S\) 上の parametrized object というのか疑問に持つ人もいるかもしれないが, これは Grothendieck construction による prestack と fibered category の関係を考えるとよく分かる。 \(S\) が通常の category の場合, Grothendieck construction により, functor \(F: S^{\op }\to \bm{C}\) と \(\mathrm{Gr}(F) \to S\) が同一視されるからである。

References

[ABG18]

Matthew Ando, Andrew J. Blumberg, and David Gepner. “Parametrized spectra, multiplicative Thom spectra and the twisted Umkehr map”. In: Geom. Topol. 22.7 (2018), pp. 3761–3825. arXiv: 1112.2203. url: https://doi.org/10.2140/gt.2018.22.3761.

[Cla81]

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[Fie84]

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[Smi70b]

Larry Smith. “On the Künneth theorem. I. The Eilenberg-Moore spectral sequence”. In: Math. Z. 116 (1970), pp. 94–140.

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[Wal]

Robert Waldmüller. Products and push-forwards in parametrised cohomology theories. arXiv: math/0611225.