抽象的なホモロジー代数

代数的トポロジーの初歩を勉強していくと, chain complex に慣れ親しむ過程で, 自然に環 \(R\) 上の module の圏のホモロジー代数が身に付くはずである。

そして, category と functor の言葉を身に付ければ, その後抽象的なホモロジー代数を理解するのはそれほど難しくないはずである。 Module の圏で行なったことは, 一般のAbel圏でもできる。

逆に言えば, Abel圏とはホモロジー代数を行なうために必要な性質を抽象化して定義されたものである。

これらを勉強するのには, どのような本を読むのが良いだろうか? ホモロジー代数の教科書は色々出版されているので, 色々試して, 自分に合うものを見付けるのが良いと思う。

有名な古典は Cartan と Eilenberg の [CE99] であるが, まだ勉強する価値はあると思う。 比較的新しいものとしては, Gel\('\)fand と Manin の [GM99; GM03] がある。

古典的なホモロジー代数の研究対象は, Abel圏での differential graded object であるが, Stasheff らによりその概念が拡張されている。特に, 数理物理で自然に現われる構造のようである。

ホモロジー代数の目的は, もちろん, ホモロジーやコホモロジーを調べることであるが, その中でも直接的な関係があるのは, 群や環などの代数的構造のホモロジーやコホモジーである。 Hochschild homology や cyclic homology など。

古くから様々な試みがなされてきたのは, Abel圏ではない圏でのホモロジー代数である。

Abel圏の一般化や変種も必要になることがある。

代数的 \(K\) 理論のためには exact category や Waldhausen category といった概念が必要になる。

ホモトピー論的な視点からは, ホモロジー代数はホモトピー代数の一部と言える。

様々な分野で使われている derived categorytriangulated categorymodel category の言葉を用いると精密化できる。 例えば, triangulated category は色んな意味で不都合な点が多いので, derived category をとる前の dg categoryspectral category などで考えることが行なわれるようになってきたが, それらを扱うためには model category の言葉が不可欠である。Ben-Zvi と Francis と Nadler の [BFN10] のように, Bondal と Kapranov [BK90] にならって, これらを enhanced triangulated category と呼ぶようになってきたようである。

また, spectral category や stable \(\infty \)-category などの概念が登場し, triangulated category の二つの起源である stable homotopy theory と古典的なホモロジー代数が融合されるようになったのも興味深い流れである。

Triangulategory や model category の family を考えると derivator という概念を得る。

より古典的な視点からのホモロジー代数の一般化としては, Khovanov [Kho16] の Hopfological algebra がある。

References

[BFN10]

David Ben-Zvi, John Francis, and David Nadler. “Integral transforms and Drinfeld centers in derived algebraic geometry”. In: J. Amer. Math. Soc. 23.4 (2010), pp. 909–966. arXiv: 0805 . 0157. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0894-0347-10-00669-7.

[BK90]

A. I. Bondal and M. M. Kapranov. “Framed triangulated categories”. In: Mat. Sb. 181.5 (1990), pp. 669–683.

[CE99]

Henri Cartan and Samuel Eilenberg. Homological algebra. Princeton Landmarks in Mathematics. With an appendix by David A. Buchsbaum, Reprint of the 1956 original. Princeton, NJ: Princeton University Press, 1999, pp. xvi+390. isbn: 0-691-04991-2.

[GM03]

Sergei I. Gelfand and Yuri I. Manin. Methods of homological algebra. Second. Springer Monographs in Mathematics. Berlin: Springer-Verlag, 2003, pp. xx+372. isbn: 3-540-43583-2.

[GM99]

S. I. Gelfand and Yu. I. Manin. Homological algebra. Translated from the 1989 Russian original by the authors, Reprint of the original English edition from the series Encyclopaedia of Mathematical Sciences [ıt Algebra, V, Encyclopaedia Math. Sci., 38, Springer, Berlin, 1994; MR1309679 (95g:18007)]. Berlin: Springer-Verlag, 1999, pp. iv+222. isbn: 3-540-65378-3.

[Kho16]

Mikhail Khovanov. “Hopfological algebra and categorification at a root of unity: the first steps”. In: J. Knot Theory Ramifications 25.3 (2016), pp. 1640006, 26. arXiv: math / 0509083. url: https://doi.org/10.1142/S021821651640006X.