数について

何はともあれ「数」は数学の基本である。 代数的トポロジーを学ぶためにも「数」について色んなことが必要になる。 その中でも数を数えるのは基本だろう。 例えば, コホモロジー作用素を使うときには, 二項係数が必要になる。

また 様々な空間を定義するために, 実数と複素数について知っている必要がある。 閉区間 \([0,1]\) は, トポロジーでは homotopy や path を定義するための定義域としても基本的である。 その視点からの \([0,1]\) の特徴付けが, Leinsterの [Lei11] にある。 元は Freyd によるもののようであるが。

  • self-similarity による \([0,1]\) の特徴付け

実数の構成には, Dedekind の切断以外にも, 様々なものがあるが, それらを集めたものとして, Ittay Weiss の [Wei15] がある。

複素数についても高校の頃 (?) から慣れ親しんでいるだろうが, 例えば, Arnol\('\)d の [Arn95] の§5にあるような実数と複素数の比較は, ある程度勉強した後でないと理解するのは難しいだろう。

  • Morse理論の複素数版は, Picard-Lefschetz theory
  • Stiefel-Whitney class の複素数版は, Chern class
  • 向きの付いた多様体の複素数版は Calabi-Yau多様体
  • 境界を持つ多様体の複素数版は \(2\)-ramified covering

境界を持つ多様体の複素数版が \(2\)-ramified coveringである, ということについては, Arnol\('\)d の [Arn00] に簡単な説明がある。 Morse theory の複素数版が Picard-Lefschetz theory であることについても, 簡単な説明がある。

最近でも, Donaldson-Thomas 理論 [DT98] のように, 既存の理論の複素数版を考えることにより, 大きく進展した分野もある。

\(\R \) と \(\bbC \) の次は四元数体 \(\Ha \), その次は八元数体 \(\mathbb {O}\), 通称 Cayley数体である。

上記の Arnol\('\)d による実数と複素数の比較に四元数も入れたものを, triality と呼ぶようである。Arnol\('\)d の [Arn00] に25個の triality の例を一覧表にしたものがある。 Chapoton による表もある。

Composition algebra は, \(\R \), \(\bbC \), \(\Ha \), \(\mathbb {O}\) 以外に存在しないというのが, Hurwitz の定理である。

  • composition algebra
  • Hurwitz の定理

ただ, composition algebra という条件を外せば, この次元を\(2\)倍にする操作 (Dicksonの2重化) を続けることはできる。そのようにしてできた“algebra” を Cayley-Dickson algebra と呼ぶ。

逆に実数の中で重要なものとして, 当然であるが, 素数がある。 もちろん数学の基本として素数のことは知っておかなければならないが, 代数的トポロジーでは, 空間をある素数で局所化して考えることが多いし, ホモロジーの計算でも素数\(p\)を法とした係数, つまり有限素体 \(\F _p\)係数での計算に帰着させて議論することが多いからである。 そのような計算では, 二項係数の mod \(p\) での公式を知っていると役に立つ。

また \(0\) で局所化するということは, rational homotopy typeを考えることになる。

\(\Q \) を位相空間とみなしたときには, Sierpinskiの定理により同相 \(\Q ^2\cong \Q \) があるので, この MathOverflow の質問 にあるように, \(\Q ^n\) をモデルとした多様体を考えることは意味がなさそうである。 Sierpinski の定理については, この MathOverflow の質問への Chapman の回答を見るとよい。

もちろん, より高度な数論の知識もあった方がよい。特に, 安定ホモトピー論を勉強するためには。

References

[Arn00]

V. I. Arnold. “Polymathematics: is mathematics a single science or a set of arts?” In: Mathematics: frontiers and perspectives. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 2000, pp. 403–416.

[Arn95]

V. I. Arnol\('\)d. “Remarks on eigenvalues and eigenvectors of Hermitian matrices, Berry phase, adiabatic connections and quantum Hall effect”. In: Selecta Math. (N.S.) 1.1 (1995), pp. 1–19. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF01614072.

[DT98]

S. K. Donaldson and R. P. Thomas. “Gauge theory in higher dimensions”. In: The geometric universe (Oxford, 1996). Oxford: Oxford Univ. Press, 1998, pp. 31–47.

[Lei11]

Tom Leinster. “A general theory of self-similarity”. In: Adv. Math. 226.4 (2011), pp. 2935–3017. arXiv: 1010 . 4474. url: https://doi.org/10.1016/j.aim.2010.10.009.

[Wei15]

Ittay Weiss. “Survey article: The real numbers—a survey of constructions”. In: Rocky Mountain J. Math. 45.3 (2015), pp. 737–762. arXiv: 1506. 03467. url: https://doi.org/10.1216/RMJ-2015-45-3-737.