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位相空間論を使いこなすためには, まず集合と写像の扱いに慣れておかないといけない。 集合論の教科書としては何が良いのかよく分からない。
Bourbaki [Bou04] が良いのだろうか。
現在では集合論の公理系は確立している。 しかしながらどの段階で集合論の公理系について勉強するか, というのは難しいところである。公理系を学ぶ前に,
それらの公理がどうして必要なのかを理解するために, Russel の paradox について 考えてみるとよいかもしれない。
現在の集合論, よって数学は以下の Zelmelo-Fraenkel-Cantor (ZFC) の公理系に依拠している。
- 外延性公理 (axiom of extensionality)
- 分出公理図式 (axiom schema of separation)
- 対公理 (axiom of pairing)
- 合併公理 (axiom of union)
- 巾集合公理 (axiom of power set)
- 無限公理 (axiom of infinity)
- 置換公理図式 (axiom schema of replacement)
- 正則性公理 (axiom of regularity)
- 選択公理 (axiom of choice)
もっとも, これらの公理の内いくつかを仮定しない数学も存在する。 とくに選択公理を除いた公理系を Zelmelo-Fraenkel (ZF)
の公理系という。
選択公理にはいくつかの同値な命題が知られている。 有名なのは, 次の2つだろう。
この MathOverflow の質問に対する回答によると, 選択公理は次のような代数的構造の存在と同値になる。
- 任意の無限集合が群構造を持つ
- 任意の無限集合がAbel群の構造を持つ
- 任意の無限集合が環構造を持つ
- 任意の無限集合が体の構造を持つ
Gödel は ZF の下で一般連続体仮説と選択公理が無矛盾であることを証明した。 その後 Cohen
は一般連続体仮説と選択公理が独立であることを証明している。
- 一般連続体仮説 (generalized continuum hypothesis)
Zelmelo-Fraenkel の公理系を用いる際には (つまり普通に数学を行なう際には), 次の事実を知っておくべきだろう。
集合全体は集合にならないため, 位相空間全体やAbel群全体のようなものを扱うときには, 集合論を拡張する必要がある。そのために von
Neumann [Neu25; Neu28] が考えたのが, class という概念である。その後 Bernays と Gödel により整理されたので,
von Neumann-Bernays-Gödel class theory と呼ばれる。
- von Neumann-Bernays-Gödel class theory
ただ, class 全体を考えようとすると同様の問題が起きる。 それを解決するために Grothendieck が考えたのが universe
である。
References
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[Bou04]
-
Nicolas Bourbaki. Theory of sets. Elements of Mathematics (Berlin).
Reprint of the 1968 English translation [Hermann, Paris; MR0237342].
Berlin: Springer-Verlag, 2004, pp. viii+414. isbn: 3-540-22525-0.
-
[Neu25]
-
J. von Neumann. “Eine Axiomatisierung der Mengenlehre”. In:
Journal für die reine und angewandte Mathematik 154 (1925),
pp. 219–240. url: http://eudml.org/doc/149573.
-
[Neu28]
-
J. von Neumann. “Die Axiomatisierung der Mengenlehre”. In: Math.
Z. 27.1 (1928), pp. 669–752. url:
https://doi.org/10.1007/BF01171122.
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