離散群

有限群を位相群と考えるときには, 離散位相を使うことが多い。 位数が有限ではない群では, Lie群のように, 離散位相ではない位相を使うことも多いが, \(\Z \) のように離散位相を使う場合も多い。そのような群は, 離散群と呼ばれる。

\(\Z \)の分類空間が\(S^1\)であるように, 無限離散群は, 有限次元の空間の幾何学的性質に関係しているものが多い。 有限群の分類空間が無限次元になるのと対照的である。

有限群に近いものとしては, Euclid空間の結晶構造の対称性を表す結晶群と呼ばれるクラスの群がある。 Euclid空間の合同変換群の離散部分群で, 次元と同じ rank の自由アーベル群を含むものである。

  • crystallographic group

有限ではない離散群についても, 有限生成や有限表示などの, 様々な有限性の条件を科すのが普通である。

トポロジーと関係の深い離散群としては, まず次のものを挙げるべきだろう。

また無限離散群を調べる際には, 解析の道具が役に立つことが多い。例えば, Atiyah は von Neumann algebra を用いて, \(L^2\)-cohomology を考えた。Amenability も測度を用いて定義できる。

興味深い群として, Richard Thompson の群 \(F\) がある。Thompson は, 他にも \(V\) と \(T\) という群を定義した。

ホモトピー論的な目的で導入された群として, Fred Cohen により [Coh95] で導入された群 \(K_n\), \(H_n\), \(H\) がある。もっとも, Cohen, Mikhailov, Wuの [CMW18] によると \(K_n\) と同じ群は, Milnor [Mil54] により導入されていたようであるが。

  • Cohen groups

純粋に生成元と関係式で定義された群でも, 無限群の場合には, その群構造を考える際に距離を用いるとよいというのは, Gromov の アイデア [Gro93] だろうか。有限生成群に対し word norm により距離を定義しその距離により群の性質を調べている。 このような手法を geometric group theory と呼ぶらしい。

de Cornulier らの [CGP] によると, Gromov [Gro81] は, 全ての有限生成群の成す集合に位相を定義しようとした。生成元に mark の付いた marked finitely generated group の集合に位相を定義したのは, Grigorchuk [Gri84] である。de Cornulier らは, その位相空間 の isolated point になっている群を調べている。

  • marked finitely generated group の成す位相空間

もちろん, 有限群に関することを無限群に一般化しようという試みも行なわれている。 例えば, Meir [Mei12] は group ring 上の module に関する complexity という不変量を, 無限群に一般化している。

位相群に離散位相を入れて無理矢理離散群にすることもできる。 Lie群の場合, そのようにしても, \(\F _p\)係数のコホモロジーは変わらない, という予想がある。Milnor が [Mil83] で Friedlander による予想として述べている。 また代数群に対しては étale cohomology 版もある。Morel [Mor11] は, それを Friedlander-Milnor 予想 と呼んでいるが, Lie群の場合も Friedlander-Milnor 予想と呼ぶべきだろう。

  • Friedlander-Milnor 予想

References

[CGP]

Yves de Cornulier, Luc Guyot, and Wolfgang Pitsch. On the isolated points in the space of groups. arXiv: math/0511714.

[CMW18]

Frederick R. Cohen, Roman Mikhailov, and Jie Wu. “A combinatorial approach to the exponents of Moore spaces”. In: Math. Z. 290.1-2 (2018), pp. 289–305. arXiv: 1506.00948. url: https://doi.org/10.1007/s00209-017-2018-5.

[Coh95]

F. R. Cohen. “On combinatorial group theory in homotopy”. In: Homotopy theory and its applications (Cocoyoc, 1993). Vol. 188. Contemp. Math. Amer. Math. Soc., Providence, RI, 1995, pp. 57–63. url: http://dx.doi.org/10.1090/conm/188/02233.

[Gri84]

R. I. Grigorchuk. “Degrees of growth of finitely generated groups and the theory of invariant means”. In: Izv. Akad. Nauk SSSR Ser. Mat. 48.5 (1984), pp. 939–985.

[Gro81]

Mikhael Gromov. “Groups of polynomial growth and expanding maps”. In: Inst. Hautes Études Sci. Publ. Math. 53 (1981), pp. 53–73. url: http://www.numdam.org/item?id=PMIHES_1981__53__53_0.

[Gro93]

M. Gromov. “Asymptotic invariants of infinite groups”. In: Geometric group theory, Vol. 2 (Sussex, 1991). Vol. 182. London Math. Soc. Lecture Note Ser. Cambridge: Cambridge Univ. Press, 1993, pp. 1–295.

[Mei12]

Ehud Meir. “Projective resolutions for modules over infinite groups”. In: Algebr. Represent. Theory 15.2 (2012), pp. 391–405. arXiv: 1006.0129. url: https://doi.org/10.1007/s10468-011-9278-2.

[Mil54]

John Milnor. “Link groups”. In: Ann. of Math. (2) 59 (1954), pp. 177–195. url: https://doi.org/10.2307/1969685.

[Mil83]

J. Milnor. “On the homology of Lie groups made discrete”. In: Comment. Math. Helv. 58.1 (1983), pp. 72–85. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF02564625.

[Mor11]

Fabien Morel. “On the Friedlander-Milnor conjecture for groups of small rank”. In: Current developments in mathematics, 2010. Int. Press, Somerville, MA, 2011, pp. 45–93.