分離公理

分離公理とは, 位相空間のどのような部分集合が「分離」できるかという条件のことである。

よく用いられるのは, 開集合による分離であり, 位相空間論の授業で扱われるものの中で重要なのは次の3つだろう。

  • Hausdorff
  • 正則 (regular)
  • 正規 (normal)

この「正則」とか「正規」という用語は, 良い性質を持つもの, という定義をしたいときに用いられるので, 様々な意味で様々分野で用いられているが, 具体的な性質が分かるような名前にした方がよいと思う。

開集合による分離の中で最も弱い条件は \(T_{0}\) であるが, finite \(T_{0}\)-space は, 驚くことに, トポロジーの視点からも興味深い性質を持つ。

  • \(T_{0}\)
  • \(T_{1}\)

弱 Hausdorff というのは, 位相空間論の授業ではあまり扱わないと思うが, 代数的トポロジーでは有用な条件である。McCord [McC69] により導入された。その論文によると, J.C. Moore の suggestion によるらしい。 コンパクト生成位相を考えるときに用いる。

  • 弱 Hausdorff (weak Hausdorff)

開かつ閉である集合 (clopen set) による分離を用いて定義されるものとして, totally separated space の概念がある。Johnstone による Stone space の特徴付け [Joh82] に登場する。

  • totally separated space

もう一つのよく使われる分離の方法として, 連続関数による分離がある。 正規空間の中の共通部分を持たない閉集合が連続関数で分離できるというのが, Urysohn の補題である。

  • Urysohn’s lemma

Completely regular とは, 閉集合とその中にない\(1\)点が, 連続関数で分離できることで, regular と normal の中間に位置する。 可換な \(C^*\)-algebra の圏と compact Hausdorff space の圏の間の Gel\('\)fand-Naimark の双対性の証明に登場する。

  • completely regular

基本的な性質としては以下のものが挙げられる。

  • Hausdorff 空間の部分空間は Hausdorff
  • Hausdorff 空間の retract は閉集合
  • 正則空間の部分空間は正則
  • 正規空間の部分空間は正規とは限らない
  • 正規空間の閉部分空間は正規

被覆空間の理論では, 連結性や単連結性を局所的にした条件が必要になるが, Hausdorff 性についても修正する必要があるらしい。Fischer らの [Fis+11] では, 次のようなものが使われている。

  • homotopically Hausdorff
  • strongly homotopically Hausdorff
  • homotopically path-Hausdorff

References

[Fis+11]

Hanspeter Fischer, Dušan Repovš, Žiga Virk, and Andreas Zastrow. “On semilocally simply connected spaces”. In: Topology Appl. 158.3 (2011), pp. 397–408. arXiv: 1102.0993. url: https://doi.org/10.1016/j.topol.2010.11.017.

[Joh82]

Peter T. Johnstone. Stone spaces. Vol. 3. Cambridge Studies in Advanced Mathematics. Cambridge University Press, Cambridge, 1982, pp. xxi+370. isbn: 0-521-23893-5.

[McC69]

M. C. McCord. “Classifying spaces and infinite symmetric products”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 146 (1969), pp. 273–298. url: https://doi.org/10.2307/1995173.