コホモロジー作用素の理論

コホモロジー作用素は, 特異コホモロジーに おいてSteenrodにより発見された。その有用性を理解するために, 次のような 例を考えてみるといいだろう:

  • 位相空間\(X\)と\(Y\)で整係数特異コホモロジーが次数付きAbel群として同型 \[ H^*(X) \cong H^*(Y) \] であるが, \(X\)と\(Y\)はホモトピー同値ではない例。
  • 位相空間\(X\)と\(Y\)で整係数特異コホモロジーが環として同型 \[ H^*(X) \cong H^*(Y) \] であるが, \(X\)と\(Y\)はホモトピー同値ではない例。

最初の問題では, コホモロジーを次数付きAbel群の圏に値を持つ関手 \[ H^* : \category{Top}^{\op } \longrightarrow \category{GradedAbelianGroup} \] と考えている。次数付きAbel群のような単純な対象では, 位相空間のような複雑 なものの情報を十分拾い出すことはできない。

係数が可換環の場合, コホモロジーは可換な積を持ち次数付き可換代数に値を 持つ関手 \[ H^* : \category{Top}^{\op } \longrightarrow \category{GradedCommRing} \] になるが, 二番目の問題はこれでもまだ不十分であることを言っている。

実は, コホモロジーはコホモロジー作用素というものの成す「環」上の代数と みなすことができ, その情報を用いると空間の情報をかなり詳しく取り出すこ とができる。標数 \(p\) の素体 \(\F _p\) 上の特異コホモロジーの場合は, Steenrod algebraと呼ばれHopf algebraの構造を持つ。

特異コホモロジーでのコホモロジー作用素は様々な扱いができるが, 完全に代 数的に取り扱うこともできる。Woodの[Woo97]では, 代数的な微分作用素を用いた 扱いが述べられている。

  • 微分作用素とSteenrod operation

別の代数的なアプローチとしてはLarry Smithの[Smi07]もある。

Janfada と Soleymanpour [JS] は, \(2\)進整数を係数にする Steenrod operation の変種を考えている。

コホモロジー作用素は, もちろん, 一般コ ホモロジーでも考えることができるが, 代数的構造はかなり複雑になる。 Boardman と Johnson と Wilson の [BJW95] など で調べられている。 Tilman Bauer [Bau] は, コホモロジー作用素の成す代数のような, 代数的構造を扱うための枠組みを考え, plethoriesと呼んでいる。

Equivariant cohomology でもコホモロジー 作用素は考えられている。例えばCaruso の [Car99], Hu と Kriz の [HK01] や Ricka の [Ric]など。こちらも representation ring で grading が付くので複雑であるが。

  • equivariant cohomology における作用素

コホモロジー作用素だけで不十分な場合は, 更に, 高次コホモロジー作用素を 考えることもできる。Adams spectral sequence は, 高次作用素全体をその作用も込めて集めたものと考えることができる。

位相空間の圏の上のコホモロジーだけでなく, 他の圏の上のコホモロジー論で も, もちろんコホモロジー作用素は有用である。例えば, BataninとBergerと Marklは[BBM]でHochschild cochainに作用するoperadを調べている。

Intersection cohomology のコホモロジー作用素については, Goreskyの [Gor84], Goresky と Pardon の [GP89], そして Chataurらの [CST16] がある。

  • intersection cohomology 上の Steenrod operation

Étale cohomology 上の Steenrod operation について, Feng の [Fen] では, Urabe の [Ura96] が参照されている。

  • étale cohomology 上の Steenrod operation

References

[Bau]

Tilman Bauer. Formal plethories. arXiv: 1107.5745.

[BBM]

Michael Batanin, Clemens Berger, and Martin Markl. Operads of natural operations I: Lattice paths, braces and Hochschild cochains. arXiv: 0906.4097.

[BJW95]

J. Michael Boardman, David Copeland Johnson, and W. Stephen Wilson. “Unstable operations in generalized cohomology”. In: Handbook of algebraic topology. Amsterdam: North-Holland, 1995, pp. 687–828. url: http://dx.doi.org/10.1016/B978-044481779-2/50016-X.

[Car99]

Jeffrey L. Caruso. “Operations in equivariant \(\mathbf{Z}/p\)-cohomology”. In: Math. Proc. Cambridge Philos. Soc. 126.3 (1999), pp. 521–541. url: http://dx.doi.org/10.1017/S0305004198003375.

[CST16]

David Chataur, Martintxo Saralegi-Aranguren, and Daniel Tanré. “Steenrod squares on intersection cohomology and a conjecture of M Goresky and W Pardon”. In: Algebr. Geom. Topol. 16.4 (2016), pp. 1851–1904. arXiv: 1302.2737. url: https://doi.org/10.2140/agt.2016.16.1851.

[Fen]

Tony Feng. Etale Steenrod operations and the Artin-Tate pairing. arXiv: 1706.00151.

[Gor84]

R. Mark Goresky. “Intersection homology operations”. In: Comment. Math. Helv. 59.3 (1984), pp. 485–505. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF02566362.

[GP89]

Mark Goresky and William Pardon. “Wu numbers of singular spaces”. In: Topology 28.3 (1989), pp. 325–367. url: http://dx.doi.org/10.1016/0040-9383(89)90012-8.

[HK01]

Po Hu and Igor Kriz. “Real-oriented homotopy theory and an analogue of the Adams-Novikov spectral sequence”. In: Topology 40.2 (2001), pp. 317–399. url: http://dx.doi.org/10.1016/S0040-9383(99)00065-8.

[JS]

Ali S. Janfada and Ghorban Soleymanpour. Dyadic Steenrod algebra and its applications. arXiv: 1709.06962.

[Ric]

Nicolas Ricka. Subalgebras of the \(\Z /2\)-equivariant Steenrod algebra. arXiv: 1404.6886.

[Smi07]

Larry Smith. “An algebraic introduction to the Steenrod algebra”. In: Proceedings of the School and Conference in Algebraic Topology. Vol. 11. Geom. Topol. Monogr. Geom. Topol. Publ., Coventry, 2007, pp. 327–348. arXiv: 0903.4997.

[Ura96]

Tohsuke Urabe. “The bilinear form of the Brauer group of a surface”. In: Invent. Math. 125.3 (1996), pp. 557–585. url: http://dx.doi.org/10.1007/s002220050086.

[Woo97]

R. M. W. Wood. “Differential operators and the Steenrod algebra”. In: Proc. London Math. Soc. (3) 75.1 (1997), pp. 194–220. url: http://dx.doi.org/10.1112/S0024611597000324.