位相空間論

代数的トポロジーという言葉から, 位相空間を研究する分野だと思っている人が多い, ような気がする。開集合族という意味の topology と研究分野としての topology を混同しているからだろう。

研究分野としての代数的トポロジーの起源となったのは, Poincaré の Analysis Situs であるが, Poincaré は, 研究対象として多様体を想定していた。 その後, 位相空間の概念が導入され, 更に Eilenberg によりホモロジーが位相空間に対し拡張されたことから, 位相空間を研究対象として考えることができるようになったわけであるが, 中心となるのは, 多様体やCW複体などの扱い易い空間である。

とはいうものの, 代数的トポロジーを勉強するためには, 位相空間論の基本的な定義や定理を身につけている必要がある。

位相空間論を勉強するのにどの本が良いかというのは, 難しい質問である。とりあえず様々な本を手にとって見てみるのがよい, と思う。私は, 大学に入って [松坂和68] を読んで勉強した。 写像空間に関しては, Kelley の本 [Kel75] が有用である。

もっとも何が基本かというのは難しく, これらの位相空間論の教科書に書いてあることが全て必要というわけでもないし, 通常の位相空間論の講義で扱わないことで, 代数的トポロジーで重要なこともある。一つの指針としては [小中菅67] の第一章, そして[FR84] の §1.1 の内容が挙げられるだろう。

残念ながら, これらの本には少々古い点もあり, 特にコンパクト生成位相を扱っていないことは, 最大の欠点である。これについては例えば [西田吾85] や Steenrod の解説 [Ste67] などで補えばよい。

位相の中でも, 有限集合上の位相 は, 組み合せ論の研究対象でもある。 例えば, 濃度を決めたときの開集合の数を数えるなど。 例えば, [Ben] ではその generating function の零点が調べられている。

代数的トポロジーで(コ)ホモロジーを扱う際には, 位相空間よりも spectrum の圏で議論した方が便利なことも多い。 他にも, 位相空間の代りに用いられるものには様々なものがある。

References

[Ben]

Moussa Benoumhani. The open polynomials of the finite topologies. arXiv: 1310.3605.

[FR84]

D. B. Fuks and V. A. Rokhlin. Beginner’s course in topology. Universitext. Berlin: Springer-Verlag, 1984, p. xi 519. isbn: 3-540-13577-4.

[Kel75]

John L. Kelley. General topology. Vol. 27. Graduate Texts in Mathematics. New York: Springer-Verlag, 1975, p. xiv 298.

[Ste67]

N. E. Steenrod. “A convenient category of topological spaces”. In: Michigan Math. J. 14 (1967), pp. 133–152. url: http://projecteuclid.org/euclid.mmj/1028999711.

[小中菅67]

小松醇郎, 中岡稔, and 菅原正博. 位相幾何学 I. 東京: 岩波書店, 1967.

[松坂和68]

松坂和夫. 集合・位相入門. 東京: 岩波書店, 1968, pp. x+329.

[西田吾85]

西田吾郎. ホモトピー論. Vol. 16. 共立講座現代の数学. 東京: 共立出版, 1985.