(余)単体的対象についての基本

(余)単体的対象を扱うときには, まず functor として理解するのがよいだろう。

  • 非負整数 \(n\ge 0\) に対し, \([n]=\{0,1,\ldots ,n\}\) を \(0<1<\cdots <n\) で poset とみなす。 この \([n]\) 達を object とし, 順序を保つ写像を morphism とした圏 \(\Delta \)
  • 圏 \(\mathcal {C}\) における単体的対象とは関手 \[ \Delta ^{\op } \longrightarrow \mathcal {C} \] のこと
  • 圏 \(\mathcal {C}\) における余単体的対象とは関手 \[ \Delta \longrightarrow \mathcal {C} \] のこと

実際に扱う際には, 「生成元と関係式」による表現も重要である。 そのためには, 圏 \(\Delta \) の構造を知る必要がある。具体的な関係式については, simplicial set について書いてある文献なら, 大抵のものに書いてあるだろう。憶えるのは面倒であるが。

  • 圏 \(\Delta \) において morphism \[ \begin {split} d^i & : [n] \longrightarrow [n+1] \ (0\le i\le n+1) \\ s^i & : [n] \longrightarrow [n-1] \ (0 \le i\le n-1) \end {split} \] を \[ d^i(j) = \begin {cases} j, & j < i \\ j+1, & j\ge i \end {cases} \] と \[ s^i(j) = \begin {cases} j, & j \le i \\ j-1, & j>i \end {cases} \] で定義すると, 任意の \(\Delta \) のmorphismは \(d^i\) 達と \(s^i\) 達の合成で表すことができる。
  • これらの morphism \(d^i\) と \(s^i\) は次の関係式をみたす: \[ \begin {cases} d^j\circ d^i = d^i\circ d^{j-1}, & i<j \\ s^j\circ d^i = d^i\circ s^{j-1}, & i<j \\ s^j\circ d^j = 1 = s^j\circ d^{j+1} \\ s^j\circ d^i = d^{i-1}\circ s^j, & i>j+1 \\ s^j\circ s^i = s^i\circ s^{j+1}, & i\le j. \end {cases} \]

この \(\Delta \) における関係式に, covariant あるいは contravariant functor を apply してできる関係式が, cosimplicial あるいは simplicial object における関係式である。

モデル圏における simplicial object がモデル圏になるというのは有名な事実 [Hir03] である。 そのモデル構造は, Reedy モデル構造と呼ばれるものである。 その圏からモデル圏への functor category がモデル構造を持つという \(\Delta \) の性質を抽象して Reedy category という概念が得られる。

Berger と Moerdijk [BM11] は, functor のなす圏がモデル圏をもつためには, Reedy category の条件はもう少し弱められることに気がつき, generalized Reedy category を定義している。

圏 \(\Delta \) を含むような small category を使えば, (co)simplicial object の拡張が考えられる。Moerdijk と Weiss の [MW07] では tree の成す圏 \(\Omega \) の上の contravariant functor として dendroidal set という概念が定義されている。 他にも cyclic category を用いた cyclic object など様々な種類がある。

References

[BM11]

Clemens Berger and Ieke Moerdijk. “On an extension of the notion of Reedy category”. In: Math. Z. 269.3-4 (2011), pp. 977–1004. arXiv: 0809.3341. url: https://doi.org/10.1007/s00209-010-0770-x.

[Hir03]

Philip S. Hirschhorn. Model categories and their localizations. Vol. 99. Mathematical Surveys and Monographs. American Mathematical Society, Providence, RI, 2003, pp. xvi+457. isbn: 0-8218-3279-4. url: https://doi.org/10.1090/surv/099.

[MW07]

Ieke Moerdijk and Ittay Weiss. “Dendroidal sets”. In: Algebr. Geom. Topol. 7 (2007), pp. 1441–1470. arXiv: math/0701293. url: http://dx.doi.org/10.2140/agt.2007.7.1441.