多様体の胞体分割

多様体の分割として最初に系統立てて調べられたのは, 単体分割だろう。 Poincaré の ホモロジーの定義をまともなものにするために導入された。

単体だけしか使えないと, 分割の数が多くなりすぎるし, カッチリしているので扱いづらい。 その後 Whitehead により CW複体の概念が導入されて, もっと「ゆるい」分割が考えられるようになった。Morse理論などで登場するのは, そのような分割である。

現在では, 多様体の単体分割は, 組み合せ論や離散幾何の問題として扱われることが多い。 例えば, 与えられた多様体の最小の単体分割を見付けるとか, 与えられた face vector が単体分割された多様体で実現できるかとか。

単体的複体と一般のCW複体との中間に位置するのが regular CW複体であるが, 同様の問題を, regular CW複体に対して考えることも行なわれている。 例えば, 曲面については, Ziegler の [Zie08] を見るとよい。

曲面の場合には, 多角形を貼り合せてその曲面を作ることになるが, その際に四角形だけを用いたものを quadrangulation というらしい。 Lawrencenko の [Law] によると, かなり古くから考えられているようである。例えば, minimal quadrangulation を調べた Hartsfield と Ringel の [HR89b; HR89a] などがある。

また, 曲面の場合は, regular CW複体として分割することは, グラフをその曲面に埋め込むことと同じことである。

References

[HR89a]

Nora Hartsfield and Gerhard Ringel. “Minimal quadrangulations of nonorientable surfaces”. In: J. Combin. Theory Ser. A 50.2 (1989), pp. 186–195. url: http://dx.doi.org/10.1016/0097-3165(89)90014-9.

[HR89b]

Nora Hartsfield and Gerhard Ringel. “Minimal quadrangulations of orientable surfaces”. In: J. Combin. Theory Ser. B 46.1 (1989), pp. 84–95. url: http://dx.doi.org/10.1016/0095-8956(89)90009-9.

[Law]

Serge Lawrencenko. Realizing the chromatic numbers and orders of spinal quadrangulations of surfaces. arXiv: 1207.1882.

[Zie08]

Günter M. Ziegler. “Polyhedral surfaces of high genus”. In: Discrete differential geometry. Vol. 38. Oberwolfach Semin. Basel: Birkhäuser, 2008, pp. 191–213. arXiv: math/0412093. url: http://dx.doi.org/10.1007/978-3-7643-8621-4_10.