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代数的トポロジーでは, 実に様々な スペクトル系列が使われる。 主要なスペクトル系列の性質とそれらの間の関係を理解しておきたい。
各種スペクトル系列の構成が述べてあるのは, McCleary の本 [McC01] である。 必要に応じてそれらを勉強すればよいのであるが,
その際に, スペクトル系列の構成を, いくつかの系統に分けて理解しておくとよい。
その際に, Massey の exact couple からスペクトル系列を構成する方法として勉強した方がよいだろう。
そして, exact couple を作る方法には, 次の2つの方法があること知っておくとよい。
- filtration からホモロジーを用いてできる exact couple
- fibration の tower から ホモトピー群やホモトピー集合を用いてできる exact couple
まず filtration とホモロジーからできるスペクトル系列についてであるが, ホモロジー代数などでよく見るのはこのタイプである。
代数的トポロジーでは, 重要な空間の filtration は, 多くの場合 simplicial space の幾何学的実現の “skeleton” による
filtration で得られる。例えば, Atiyah-Hirzebruch スペクトル系列や bar-type Eilenberg-Moore
スペクトル系列がそうである。 また, Serre スペクトル系列もそのようにして構成できる。 これらを, simplicial space
のホモロジースペクトル系列と呼ぶことにしよう。
スペクトル系列を構成するもう一つの重要な方法は, fibration の tower に ホモトピー群, より一般に, 関手 \([X,-]\) を apply
することである。この方法により, EHPスペクトル系列, cobar-type Eilenberg-Moore スペクトル系列, そして,
Adams-typeスペクトル 系列などができる。 更に, その fibration の tower は, cosimplicial space の
“coskeleton” から得られることが多い。そのようなスペクトル系列を, cosimplicial space の homotopy
スペクトル系列ということにしよう。
もっとも, cobar型の Eilenberg-Moore は cosimplicial space のホモロジーを計算するものなので,
cosimplicial space の homology スペクトル系列と呼んだ方が良い。 Simplicial space の homotopy
スペクトル系列というものも考えられる。
また, スペクトル系列が degenerate して短完全列になる, あるいはよく知られている短完全列の一般化をスペクトル系列の形で得る場合もある。
例えば, 次のようなものである。
もちろん, EHP spectral sequence などのように, simplicial object や cosimplicial object
からできないものもある。
代数的トポロジーでは, コホモロジーを調べる際に cohomology operation が重要な役割を果すので, コホモロジーに収束するスペクトル系列に対しては,
\(E_{\infty }\)-term で cohomology operation に収束する作用素がスペクトル系列のレベルで構成できるとうれしい。 実際,
古くからそのことは考えられていて, 例えば Singer の [Sin73] や Sawka の [Saw82] のような仕事がある。
References
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[McC01]
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John McCleary. A user’s guide to spectral sequences. Second.
Vol. 58. Cambridge Studies in Advanced Mathematics. Cambridge:
Cambridge University Press, 2001, pp. xvi+561. isbn: 0-521-56759-9.
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[Saw82]
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John Sawka. “Odd primary Steenrod operations in first-quadrant
spectral sequences”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 273.2 (1982),
pp. 737–752. url: https://doi.org/10.2307/1999939.
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[Sin73]
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William M. Singer. “Steenrod squares in spectral sequences. I, II”.
In: Trans. Amer. Math. Soc. 175 (1973), 327–336, ibid. 175 (1973),
337–353. url: https://doi.org/10.2307/1996083.
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