Motivic Homotopy Theory

代数幾何学と代数的トポロジーで平行した議論が行なわれてきたことは, 多くの人が気がついていた。 例えば, Poincaré のホモロジーのアイデアを実現する方法として, 一方では algebraic cycle の理論が, 他方では singular homology が開発されてきた。 そして, そのハイブリッドのような理論として, Lawson homology のようなものも作られた。

当然, より直接の関係として, 代数多様体や scheme のホモトピー 論を構築することも模索されてきた。 それを実現する一つの方法として, Voevodsky の仕事がある。主要な論文や解説としては, 以下のものがある:

  • Morel と Voevodsky の [MV99] が基礎となる文献である。 その続編が [Mor12] である, と Morel は書いている。 ただ, これらをいきなり読み始めるのは無理がある。
  • まず, Voevodsky による ICM 1998 での address [Voe98] がある。それによると, Suslin との singular homology の類似の構成 [SV96] ができたので, そのアイデアがうまくいくと確信したようである。
  • Voevodsky のアイデアをまとめたものとしては Princeton から出ている本 [VSF00] があるが, それよりも Clay から出ている Voevodskyの lecture note (を Mazza と Weibelがまとめたもの) [MVW06] の方が読みやすい。
  • Weibel の [Wei04] の冒頭にある図は, smooth scheme の category から, Voevodsky の triangulated category of motives に至るまでのルートが示されていて, 全体像を把握するのに役に立つ。
  • Levine による解説 [Lev08a] では, two parallel world として, 代数的トポロジーと代数幾何学の比較が行なわれている。
  • Morel による ICM 2006 での address [Mor06] でも, Brouwer degree, 基本群による被覆の分類, Hurewicz theorem, vector bundle の分類などの, 代数的トポロジーの類似について, 述べられている。
  • Panin と Pimenov と Röndigs の [PPR09b] の半分以上は Appendixとなっていて, motivic homotopy theory が解説してある。
  • Asok による website もある。
  • Dundas らによる UniversiText [Dun+07] があることを, 東京都市大の中井さんに教えてもらった。
  • Beilinson と Vologodsky [BV08] は, dg category を使って解説している。
  • Borghesi の解説 [Bor] は, 名古屋工業大学での講義をまとめたものである。

Motivic homotopy theory とは motif (英語では motive) のホモトピー論という意味であり, motif とは, Grothendieck が, 彼が中心となって構成した様々な代数幾何学での cohomology theory の共通の元となるようなもののことである。 Grothendieck は, Abelian category として構成することを考えていたようであるが, 代数的トポロジーを勉強したことがある人なら, generalized cohomology theory の元となっているのが stable homotopy category という triangulated category であることから, triangulated category として構成しようと考えるのが自然と思うだろう。 更に, stable homotopy category は Abelian category の derived category にはなっていない triangulated category なので, Abelian category を経由ぜずに直接 triangulated category を定義すべきである, ということに気がつくはずである。

その方法としては, 当然代数的トポロジーでの stable homotopy category の構成を真似すべきだろう。 そしてそれに成功したのが Voevodsky だった。

もちろん, Grothendieck のアイデアを実現する方法には, これ以外にもあるかもしれない。Voevodsky (と Morel) が構築した category では, 位相空間のホモトピーの定義の \([0,1]\) の役割を affine line \(\mathbb{A}^1\) が果しているので, \(\mathbb{A}^1\)-homotopy theory と呼ぶのが正確だろう。その圏の構成としては, Dugger による smooth scheme の category から生成される universal model category としての構成 [Dug01] もある。

  • \(\mathbb{A}^1\)-homotopy

その motivation から, まず重要なのは 各種 cohomology theory がその圏の上で表現できることである。Algebraic \(K\)-theory も表現できる。

Motivic cohomology については, Voevodsky の lecture note が Weibel のホームページから download できる。それを表現する Eilenberg-Mac Lane spectrum の類似は [Voe98] で定義されている。Röndigs と Østvær [RØ08]は, その上の module category について調べている。それにより mixed Tate motif の成す category のホモトピー圏としての記述も得ている。

  • motivic Eilenberg-Mac Lane spectrum

Voevodsky の理論では, 一般コホモロジー, 特に complex cobordism の類似 \(\mathrm{MGL}\) が考えられることから, Adams の本 [Ada74] に解説されている手順で Poincaré duality などを証明しようというのは, 自然なアイデアである。それを実現したのが, Panin と Yagunov の [PY] である。Panin は, 共同研究者と共に, 他の complex cobordism の持つ性質の類似を考えている。Complex oriented cohomology theory の中で, universal であるという性質については [PPR08] で, Conner-Floyd の同型については [PPR09a] で, その類似を証明している。Naumann と Østvær と Spitzweck の [NØS; NSØ] では, Landweber exact functor theorem の類似が考えられている。

  • motivic Landweber exact functor theorem

\(\mathrm{MGL}\) を用いて定義される一般ホモロジー論を, 幾何学的に “scheme の cobordism” を用いて構成しょうというのは, 自然なアイデアである。それが Levine と Morel の algebraic cobordism [LM01a; LM01b]である。解説としては, Levin の ICM 2002 での講演録 [Lev02] がある。Levine と Pandharipande の [LP09] では, 別の構成方法が述べられている。

  • algebraic cobordism

Zainoulline [Zai]によると, Rost の degree formula の一般形は, Levine と Morel により algebraic cobordism の導入により得られた。 Zainoulline 自身は, その一般的な degree formula からconnective \(K\)-theory に関する degree formula を得て, imcompressibilityに関する応用を得ている。 Connective \(K\)-theory のように, 従来代数的トポロジーでしか使えなかった道具が使えるようになるというのは, 画期的である。

Algebraic cobordism での pullback を考えるときに smooth scheme だけでは間に合わないので, derived scheme を考えることを提案しているのは, Lowrey と Schürg [LS] である。

Algebraic cobordism の étale topological version を考えているのが Quick の [Qui] である。例えば, étale cohomology から出発する Atiyah-Hirzebruch spectral sequence が構成されている。

Algebraic cobordism の equivariant 版は, Heller と Malagón-López [HM] により導入された。

  • equivariant algebraic cobordism

Scheme の \(K\)-theory については, Voevodsky の仕事以前に Quillen により定義されていた。代数多様体の 一般コホモロジーについては, Gillet と Soulé の [GS99] によるものがあり, その意味で algebraic \(K\)-theory は一般コホモロジー論になっている。Feliu の [Fel] は, Chern character などを, Gillet と Soulé の意味の一般コホモロジーの間の natural transformation として解釈しようという試みである。

Chern character と言えば, Atiyah-Hirzebruch spectral sequence であるが, Chow group と結びつける Atiyah-Hirzebruch spectral sequence も知られている。

Algebraic vector bundle の 無限次元 Grassmann多様体による分類については, Morel の [Mor12] で扱われている。

Atiyah-Hirzebruch spectral sequence を代数的トポロジーで定義するときは, CW複体の skeletal filtration に cohomology theory を apply してできる exact couple からできる spectral sequence として構成するのが普通であるが, その代数幾何での類似として, Levine が [Lev08b] で homotopy coniveau tower という概念を導入している。

Dugger と Isaksen は [DI05b] で cell structure を考えている。

Tubular neighborhood の存在については, Levine の [Lev07] を見るとよい。

代数的トポロジーでの complex oriented cohomology theory の類似については oriented cohomology theory という名前で導入されている。 Panin と Smirnov による, K-theory Preprint Archives の一連の preprint [PS; Pan] がある。 Panin の論文 [Pan03; Pan09] もある。 Equivariant 版については, Calmès と Zainoullineと Zhong の [CZZ] を見るとよい。

  • oriented cohomology theory
  • equivariant oriented cohomology theory

安定ホモトピー論は, 現在では chromatic な視点から見るのが常識であるが, stable motivic homotopy theory についても periodicity が考えられている。Gheorghe [Ghe] は, Andrews の preprint を参照している。

このような stable homotopy theory の類似だけでなく, unstable homotopy theory の類似も考えるべきである。実際, Asok と Wickelgren と Williams [AWW] が James construction の類似を導入し, それを用いて EHP sequence を考えている。 それ以前に球面の場合を考えた [WW] もあるが。

  • unstable \(\mathbb{A}^1\)-homotopy theory

Motivic homotopy theory の応用としては, Dugger と Isaksen の sums of squares の問題への応用 [DI07; DI05a; DI08] がある。

Holmstrom と Scholbach [HS] は, motivic cohomology の Arakerov 版を考えている。

群作用を持つ場合も何人によって考えられている。Hoyois [Hoy17] によると, 最初に考えたのはやはり Voevodsky らしい。ただし, Voevodsky の書いたものではなく, Deligne の [Del09] が参照されている。

  • equivariant motivic homotopy theory

その後, 様々な人により研究されている。 Deshpande [Des] が equivariant algebraic cobordism を定義し, Heller, Voineagu, Østvær [HVØ] が Bredon型の cohomology theory を導入している。 よりホモトピー論的なアプローチとしては, Herrmann [Her] が model structure を 導入して \(G\)-equivariant motivic (stable と unstable) homotopy category を定義し調べている。 Hu と Kriz と Ormsby の [HKO11], Carlsson と Joshua の [CJ], そして Heller と Krishna と Østvær の [HKØ15] もある。

Hoyois [Hoy17] は, stable equivariant motivic homotopy theory で Grothendieck の six operations の類似を考えている。

可換環の代りに commutative ring spectrum を用いた “spectral 版” が Khan [Kha] により構築されている。Cisinski と Khan による続編 [CK]では, Morel-Voevodsky の理論と同値であることが示されている。

Friedlander-Walker [FW01] の意味での semi-topological version も Krishna と Park の [KP15] で考えられている。

非可換版については, Robalo の [Roba; Robb; Rob15] などがある。 Robalo は, \((\infty ,1)\)-category の枠組みを使っている。その中で Morel-Voevodsky の motivic stable homotopy category の \((\infty ,1)\)-category version も与えている。 そして, その symmetric monoidal \((\infty ,1)\)-category としての特徴付けも 与えている。

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